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日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(2)【中国問題グローバル研究所】
2025/11/04 11:06

*11:06JST 日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。


◆日中両国発表内容の比較と問題点
●祝意に関して
まず「総理就任の祝意」に関してだが、会談冒頭の各国記者向けの対談は各国がその動画を持っているはずだ。日本の民間放送には要約ではなく、話された全てを公開した動画があるが、同時通訳者の日本語が全く事実と乖離しているので使えない。そこで同時通訳のない英語圏の会談冒頭動画(※2)を詳細に観察してみたが、習近平国家主席は、ただの一言たりとも「祝意」など述べていない。

冒頭でどう言ったのかを書くと以下のようになる。

――高市首相とは初めてお会いします。(首相)就任後、あなたは「中国と日本は重要な隣国で、建設的で安定的な対話関係を構築し、両国の戦略的互恵関係を全面的に推進する必要がある」と表明しました。これはあなたと新内閣が中日関係を重視していることを体現しています。私もまた、「意思疎通を維持し、中日関係の正しい発展を共に推進していくこと」に同意します。(引用以上)

本稿冒頭にも書いたように、中国は「高市総裁は公明党が与党連立から離脱せざるを得ないところに追い込んだ」と解釈しているし、祝電も打っていない。したがって「祝意」を表するというのは考えにくい。外務省の「1」にある「祝意が表明されました」という言葉には疑問がある。


●台湾問題に関して
中国側は常に細かな対話内容は書かずに、中国の首脳が何を言ったかだけを書き(言ってない言葉は書かない)、相手側首脳が何を言ったかは、基本的に「4対1」程度の重みで「中国にとって都合のいい所だけを抜き出して書く」(言っていない言葉は書かない)というのが長年の慣例だ。

この視点から見ると、台湾問題に関して、中国側発表にある「日本は1972年の日中共同声明における立場を堅持する」という言葉を、高市総理が言っていないというのは考えにくい。しかし日本側発表「3」の中にはそれがない。日中首脳会談後の高市総理の記者会見(※3)を見ると、そこには「台湾に関して、先方から少しお話がございましたので、やはりこの地域の安定、そして安全というものは、やはり両岸関係が良好であることが非常に重要であるということは申し上げました」とある。ここにも「日本は1972年の日中共同声明における立場を堅持する」という言葉はない。この点は明確にしてほしいと思う。これによって今後の日中双方の動向とその考察が変わってくるからだ。


●レアアースの輸出制限に関して
日本側発表の「3」に、「高市総理大臣から中国によるレアアース関連の輸出管理措置に強い懸念を表明した」とある。

中国がレアアースの輸出制限を今年10月9日になって新たに言い出したのは、10月27日の論考<トランプはなぜ対中100%関税を延期したのか? その謎解きに迫る>(※4)および10月30日の論考<米中首脳会談 予測通り障壁は「50%ルール変更」だった!>(※5)に書いたように、あくまでも9月29日にアメリカのラトニック商務長官が「50%ルール変更」を宣告したからだ。

NHKを含め日本メディアは、どうしてもこの現実を報道しようとしないので、結局、高市総理にもまちがったインプットをしてしまい、責任は重大だ。このようなことを日本メディアが継続すれば、日本は世界の動向を読み取れなくなり高市政権にもマイナスの影響を与える。警告したい。


◆結論
結論的に言えるのは、中国側は「高市総裁が率いる自民党が、公明党を離脱せざるを得ない状況に追い込んだ」として不愉快に思っているが、高市総理が総理就任の所信表明演説で「戦略的互恵関係」に触れながら対中安倍路線を踏襲することが分かったので、実は「安堵」していることが見て取れる。

2012年9月に、自民党総裁選に当たって、筆者はそのときの総裁選立候補者である「安倍晋三、石破茂、林芳正、石原伸晃」(町村氏は病欠)の4氏とテレビ会談をしたことがある。そのときは民主党政権から自民党政権へと移行させようといううねりがあった時期でもあったので、テレビ出演寸前の待機時間に思い切って中国の老幹部に電話をしてどう思うかを聞いた。すると老幹部は「そりゃあ、自民党が良いに決まっているでしょう。民主党ではだめですよ、あの尖閣問題を見てください」と即答した。

これをスタジオで自民党総裁選立候補者4人にぶつけたところ、全員が身を乗り出して「お―!」と声を上げ、特に安倍元総理は「もう一度言ってください!」と意気込んだことがある。

いま思うに、中国側には「自民なら公明が付いているから安心」という思惑があったのではないかと解釈される。今般はその公明が抜けたので、習近平国家主席は高市総理には就任の祝電も送らなかった。しかし所信表明演説で安倍元総理が提唱した「戦略的互恵関係」に言及したので、「対中安倍路線を歩むのなら歓迎するが、しかし公明党を連立から追い出した自民党執行部体制は許さない」ということから、「罰」を与えるために日中首脳会談開催を、開催寸前まで決定しなかったということかと結論付けることができる。

それにしても、高市総理はその難関をよく耐えた。期待したい。


この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。

写真:中華人民共和国外交部のウェブサイトから転載

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.youtube.com/watch?v=FAmnA5pH7J8
(※3)https://www.kantei.go.jp/jp/104/statement/2025/1031kaiken.html
(※4)https://grici.or.jp/6816
(※5)https://grici.or.jp/6835
(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c45f947fc3636925c9e2a97583ea3752497f00e1





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