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VIS Research Memo(5):mRNA標的創薬でブルーオーシャンの創出に期待

*12:05JST VIS Research Memo(5):mRNA標的創薬でブルーオーシャンの創出に期待
■Veritas In Silico<130A>の事業概要

4. mRNA標的医薬品のメカニズムと市場性
(1) mRNA標的低分子医薬品
mRNA標的低分子医薬品とは、疾患関連タンパク質の情報をコードしたmRNAに結合し、細胞内でmRNAの情報に基づいてタンパク質合成を行うリボソームの働きを阻害・制御することにより、疾患関連タンパク質の合成を阻害する医薬品である。現在の医薬品の主流であるタンパク質標的低分子医薬品との違いは、タンパク質標的型の低分子医薬品が疾患関連タンパク質の活性部位に直接作用する必要があるのに対し、mRNA標的型の低分子医薬品はmRNAのどこかに作用してタンパク質の設計図の機能を抑えることにより疾患関連タンパク質の合成自体を止めてしまうところにある。タンパク質標的低分子創薬では、これまでに国内外の多くの製薬会社が研究開発に取り組んできた結果、近年、低分子医薬品の創薬標的となる疾患関連タンパクの枯渇という課題が指摘されている。一方で、mRNA標的低分子創薬は、2010年代後半から研究が始まった新しい領域であり、世界で上市された医薬品はほとんどない状況にある。このアプローチは非常に汎用性が高く、従来のタンパク質標的創薬では標的にできなかった疾患関連タンパク質にも新たな治療の可能性が生まれることにより、将来的に大きな市場を拓く可能性があり、ブルーオーシャンの開拓が期待される。同社は複数の製薬会社と共同研究契約を締結し、がんや中枢神経系疾患、循環器系疾患、免疫系疾患、感染症など幅広い対象疾患候補について研究を進めている。特に患者数の多いがん領域や、血液脳関門にブロックされることにより抗体医薬品などが届きにくい中枢神経系疾患への貢献が期待できる。

(2) 核酸医薬品
創薬プラットフォームibVISは、mRNA標的低分子創薬に限らず、mRNA標的核酸創薬にも適用可能である。低分子化合物はmRNA上の存在確率が高く安定した部分構造に結合するが、同社がパイプライン型ビジネスで手掛けようとしているASOは、存在確率が高く不安定な部分構造に結合する。ASOは中分子医薬品であるため、低分子医薬品に比べて標的特異性が高く、また、高分子の抗体医薬品が細胞膜を通過できないのに対し、同社のこれまでの実績では、細胞膜を通過し細胞内に入るASOを取得することができている。核酸医薬品は希少疾患の治療に適しているといえ、製造コストが高いことが課題点として指摘されており、大手製薬メーカーが重視する医療経済の観点では、通常の疾患には製造コスト・単価ともに低廉な低分子医薬品の投与が望まれる。

(3) mRNA標的医薬品の市場性
ここまでご紹介したmRNA標的創薬技術によって、タンパク質を標的とする従来の創薬技術では“Undruggable(創薬不可能)”とされてきた疾患についても今後は“Druggable(創薬可能)”となることが期待でき、疾患関連タンパク質の半数以上を占めているアンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ)に応えていける可能性が高まっている。特にmRNA標的低分子創薬の手法が実用化されると、経口投与が可能な錠剤や粉薬などの形で、医療経済的に有利な低価格の低分子医薬品において、現在の医薬品市場で最大のカテゴリーであるタンパク質標的の低分子医薬品と併存する形で新たな市場カテゴリーが開拓されていく可能性が高いと考えられる。この場合のmRNA標的低分子医薬品の市場は、現在のタンパク質標的の低分子医薬品で2030年に約55兆円と予想される市場規模(出典:内閣官房 健康・医療戦略室委託事業「令和二年度 医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連の産業化に向けた課題及び課題解決に必要な取組みに関する調査報告書」)に上乗せする形で伸長していき、中長期的にはタンパク質標的の低分子医薬品と同規模程度にまで拡大していくことも期待される。一方、核酸医薬品は、希少疾患向けに開発が進むことにより、比較的高い薬価で新たな市場が形成されていく可能性はある。mRNA標的低分子医薬品、mRNA標的核酸医薬品、いずれの市場も高い成長が見込まれており、先駆的なポジションを確保している同社の将来時点の収益への貢献期待が高まっている。


今後の事業規模の拡大により収益の不安定さは解消へ

5. 同社の収益構造
現在、事業収益が発生しているのはプラットフォーム型ビジネスのみである。プラットフォーム型ビジネスの収益は、各社と締結する共同創薬研究契約の内容によって異なるが、主に以下の4種類に分類される。契約締結時に一度に受け取る「契約一時金」、共同創薬研究の実施に対する対価として受け取る「研究支援金」、研究・開発の進捗や将来の上市後の販売実績に応じて事前に取り決めた条件を達成した際に受け取る「マイルストーン収入」、医薬品販売開始後に年間の事業収益に応じて受け取る「ロイヤリティ収入」がある。一方、パイプライン型ビジネスによる事業収益は、自社開発したmRNA標的医薬品を製薬会社に導出したり、自社パイプラインとして開発・販売したりすることにより、中長期的に発生する見込みである。

同社の収益発生状況を見ると、まだ不安定になりがちと見受けられるが、今後、新たな共同創薬研究契約の締結や現在進行中の創薬プロジェクトの進捗につれてプラットフォーム型ビジネスの収益が増え、自社パイプラインの開発の成否という不確定要素はあるものの、収益は安定化していくと期待される。

なお、今後の契約内容は、契約一時金を減額しつつ研究支援金やマイルストーン収入を増額する方向で調整を進めているため、中期的にも収益の安定化が見込まれる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)



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