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室町ケミカル Research Memo(7):事業再構築と成長基盤固めに取り組む「中期経営計画2028」を発表(2)

*13:07JST 室町ケミカル Research Memo(7):事業再構築と成長基盤固めに取り組む「中期経営計画2028」を発表(2)
■室町ケミカル<4885>の今後の見通し

(2) 化学品事業
イオン交換樹脂・分離膜の世界市場は水処理分野のほか、製薬、食品・飲料、鉱業など多様な分野で需要が拡大しており、安定的に拡大している。国内市場についても半導体業界を中心に工業用途での拡大が見込まれるほか、生活インフラである水道水分野も新たな市場として注目され始めている。

こうしたなか事業戦略として、a) イオン交換樹脂・膜・装置の販売拡大、b) 海外展開の推進、c) 市場性のある新規用途の開発、d) 学会やWeb等での情報発信の充実による新規需要の掘り起こし加速に取り組み、2028年5月期に売上高32.8億円、営業利益1.7億円、EBITDA2.5億円を計画しており、その後もPFAS除去対策など新規市場の拡大により2031年5月期に売上高50億円、営業利益5億円弱、EBITDA6億円弱と医薬品事業に並ぶ収益水準までの成長を目指している。なお、同計画には海外案件を含んでおらず、受注できれば上乗せ要因となる。

a) PFAS除去用イオン交換樹脂
今後の化学品事業の成長をけん引する市場として、水道事業者向けのPFAS除去用イオン交換樹脂が挙げられる。2024年6月に岡山県内の水道水から高濃度のPFASを検出したことがニュースで大きく取り上げられ社会問題化したことをきっかけに、環境省が水道水に含まれるPFASの基準値を従来の「暫定目標」から水道法上の「水質基準」に格上げする方針を決定したためだ。基準値については50ナノグラム/リットル※で変わりないが、「水質基準」に格上げされたことで、水道事業者には定期的な水質検査の実施やPFASの濃度が基準値を超えた場合の改善が義務づけられることになり、省令改正により2026年4月より施行される。

※ 水道中のPFASのうち、健康への有害性が指摘されているPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の2つの物質の合算値。体重50kgの人が毎日2リットル飲用し続けても、健康に悪影響が生じないと考えられる水準として設定された。

現在、上水道の浄水施設では安価な活性炭が主に用いられているが、吸着性能でより優れるイオン交換樹脂に対する関心が高まっており、自治体や水道事業者から多くの問い合わせや引き合いがきている。同社は、PFAS除去用イオン交換樹脂として自社ブランド「Muromac WMT-718B」と提携先である独ランクセス製の「Lewatit TP108DW」の2製品を揃えている。いずれの製品も単位体積当たりのPFAS吸着容量が活性炭と比較して5~10倍程度高く、長鎖から短鎖まで幅広いPFASの吸着に対応できることが特徴となっている。

浄水施設の浄化工程において原水に含まれるPFASの種類や処理の目標濃度に応じて製品を提案していくほか、活性炭との組み合わせによりトータルコストを抑えるなど顧客ニーズに合わせて最適なPFAS除去対策ソリューションを提案し、受注につなげていく戦略だ。既に商社や装置メーカーなど多数の企業とアライアンスを組み、共同で営業活動や試験評価作業を進めている段階にある。2025年5月期の売上実績は数千万円程度だが、改正省令が施行される2026年4月以降は本格的に需要が拡大し、収益成長ドライバーになるものと期待される。

また、PFASのモニタリング技術についても簡便な分析方法を確立し、検査にかかる時間短縮と検査分析装置の低価格化を目指し※、東京学芸大学や分析装置メーカーと共同で研究開発を進めている。2026年5月期中に実証試験を開始し、2027年5月期の実用化を目指している。さらには、PFAS吸着用イオン交換樹脂の再生技術についても基礎技術を確立済みで、現在メーカー2社とそれぞれ異なる再生技術の実用化に向けた共同開発を進めており、知財戦略も進めながら早期の実用化を目指している。同社では、吸着性能の高いイオン交換樹脂の供給に加えてモニタリング技術、再生技術と3つのソリューションを一括提供していくことで差別化を図り、自治体等の水道事業者向けの市場を開拓する戦略だ。

※ 原水に含まれるPFASを濃縮する技術と既存の分析手法の改良・組み合わせにより、高精度にPFAS濃度を分析する技術を確立し、分析時間を数時間程度に短縮する。また、現在分析に用いられている液体クロマトグラフ質量分析計(1台数千万円以上)の10分の1程度の価格で提供できる分析装置の開発に取り組んでいる。

水道事業者には上水道の浄化施設からPFASの「水質基準」の適用が開始されるが、将来的には工場等からの排水においても何らかの基準が導入される可能性もある。排水に関する潜在需要については必要量などがまだ不明なため試算できていないが、イオン交換樹脂の売上拡大に向けて追い風になるのは間違いなく、今後の動向が注目される。

b) 海外展開
同社は化学品事業のさらなる成長を目指すべく、海外展開についても取り組みを進めている。自社で用途開発したイオン交換樹脂を中心に、直接または商社と組んで販売先を開拓し、大型案件の獲得を目指している。具体的には欧米や豪州の鉱業案件、中国の飲料案件、インドネシアの食品関連案件などで受注獲得を目指し、既に複数の案件で見積書も提出している。競合先との差別化ポイントとして、吸着性能の高さとコスト面のメリットをアピールしているようだ。受注が決まれば2027年5月期以降に売上貢献を開始する見通しであり、既存案件よりも規模が1ケタ大きくなるだけに、その動向が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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