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キャスター Research Memo(6):AI技術の活用に向けた取り組みが本格化
2025/05/29 12:06
*12:06JST キャスター Research Memo(6):AI技術の活用に向けた取り組みが本格化
■キャスター<9331>の主なトピックス
1. 「CASTER NEO」の提供開始
2025年3月から、BPaaS×AIによるAIエージェント制作代行サービス「CASTER NEO」の提供を開始した。顧客のビジネス・組織課題に合わせてフルカスタマイズし、要件定義から実装、さらには保守までを一貫してサポートすることでAI活用を強力に支援するサービスとなっており、ベーシック(30万円(税抜)/月)、スタンダード(50万円(税抜)/月)、プレミアム(個別対応)の3つのグレードに分けられる。
2. 「AIファースト経営」への移行
同社は、経営から実務に至るまでのすべての業務オペレーションにおいてAI駆動化を実装し、「AIファースト経営」へ移行することを宣言した。具体的には、1) 資料をAI用に最適化されたマークダウンファイル形式に切替え、文書管理を効率化、2) 社内問い合わせ業務をAIチャットポット対応で自動化し、迅速かつ効率的な業務運営を実現、3) 社内でAI活用のノウハウを蓄積し、クライアント企業へのAIソリューション提供の強化などが挙げられる。
3. マネーフォワードとの連携強化
2024年5月に資本業務提携を締結したマネーフォワード<3994>※1とは連携強化に向けた協議を進めている。具体的には、1) 経理専門商材のPoC開始※2、2) 両社代表を交えたステアリングコミッティの毎月開催、3) 事業拡大に向けた、経理専門人材の確保などに取り組み、一定の前進が図られた。やや前のめりで人材獲得を実施したことが中間期におけるコスト要因となったことは否めないが、今後の事業拡大や稼働率の調整等により適正なコストコントロールを効かせるフェーズへと進める考えだ。経理専門人材の獲得は難しいと言われているが、同社のノウハウを生かした業務プロセスの細分化により、様々な人材を各領域で活用できる仕組みとなっており、同社の採用力の高さやワークフロー構築力が発揮されている。
※1 マネーフォワードは個人資産管理サービス及びクラウドサービスを提供している。資本業務提携の内容や目的については前回フィスコレポート(2024年8月29日発行)を参照。
※2 PoCとはProof of Concept(概念実証)の略称。マネーフォワードクラウドと「CASTER BIZ accounting」による新商材のPoCを開始し、市場での競争力を高める新製品開発を進めている。
4. ベトナム子会社の設立
2025年4月にはシステム開発拠点としてベトナム子会社CASTER TECH VIETNAM CO., LTD.を設立した。もともと子会社であるグラムスの開発は大部分がベトナムにあったことから、そのオフショア開発のノウハウを活かす格好だ。これまで外注していた社内システムやAIエージェント関連の開発業務の移管(グループ内製化)を推進中である。
5. EC向け独自AI搭載SaaSサービスの提供開始(グラムス)
子会社のグラムスがEC運営の業務効率支援に向けて独自AIを搭載したSaaSサービス「SASAGE.APP」を開始した。特徴的なのは、「Claude」や「ChatGPT」のような汎用AIと呼ばれるものとは違い、撮影、採寸、原稿作成(それぞれの頭文字をとって「ささげ業務」と呼ばれている)のような出品業務に係る特殊領域に対して、非常に綿密にチューニングされたAIというところである。同社では、本サービスを通じて、EC企業向け業務効率化支援の付加価値をさらに高めるとともに、この技術を他の領域にも転用する方針だ。
6. オンライン・オフラインイベントへの参加
同社はWebマーケティングを主軸としており、その方針自体は変わらないが、新たなチャネルとして、セミナー登壇や展示会のようなオフラインを含め、様々なイベントにも挑戦する考えである※。特に、ブース設立やパース設計については急速にAI実装が進んでおり、同社が目指す世界やポテンシャルを発信するとともに、実際に体感する機会を増やすことは、話題性や知名度を高めるうえでも効果があると考えられる。
※ 最近の出展としては、「経理の未来を大予想!AI活用と人材育成の新潮流」((株)LayerXの共催オンラインイベントセミナーに登壇)、ビジネスカンファレンスイベント「GROWTH 祭TOKYO 2025」(シルバースポンサーとして協賛・スポンサーブース出展)、「BOXIL EXPO 人事・総務展2025春」(シルバースポンサーとして協賛・セミナー登壇)、EC/通販業界のビジネスイベント「イーコマースフェ東京2025」(ブース出展・セミナー登壇)などがある。
■業績見通し
期初予想を据え置き、ARPU改善やコスト最適化により営業利益の黒字転換を目指す
1. 2025年8月期の業績予想
2025年8月期の連結業績予想については、期初予想を据え置き、売上高を前期比13.4%増の5,037百万円、営業利益を10百万円(前期は151百万円の損失)、経常損失は18百万円(同158百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失を13百万円(同217百万円の損失)と増収及び営業利益の黒字転換を見込んでいる。
下期は、既存顧客へのクロスセル・アップセルによるARPU改善が業績の伸びをけん引するとともに、アライアンスによる新規案件獲得を強化する方針である。
損益面でも、新規顧客獲得に向けた広告費配分の調整や受注動向に合わせた稼働率の維持によりコスト最適化を図る。したがって、上期における出遅れ分についてはARPU改善とコスト最適化でカバーし、通期での営業利益の黒字転換を目指す。
2. 弊社の見方
通期予想達成のためには、下期の売上高2,746百万円、営業利益283百万円が必要となる。顧客資産の積み上げや解約率の低位安定に加え、ARPU改善も期待できることから、売上高予想は十分に達成可能であると弊社では見ている。一方、利益予想の達成は高いハードルと言わざるを得ないであろう。もちろん、同社ビジネスモデルの収益性(売上総利益率)自体は非常に高いことから、広告費や人件費を抑えれば理論的に達成できない水準ではない。したがって、今後の成長と足元収益のバランスをどう取っていくのか政策的な判断によるところが大きいとの見方もできる。同社は成長を優先すべきステージにあると弊社では考えており、先行投資を継続しつつ、ARPU改善やコスト最適化によりどこまで予想水準に近付けるかがポイントになると見ている。いずれにしても、第3四半期の数値の出方に注目したい。また、戦略的な視点からは、マネーフォワードとの連携強化やAIエージェントの活用による新たな展開に期待したい。特に大型案件(高単価)が期待できる経理領域の深掘りがどのように本格的に立ち上がってくるのか、今後の方向性や成長スピードを占ううえでも重要な判断材料となるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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■キャスター<9331>の主なトピックス
1. 「CASTER NEO」の提供開始
2025年3月から、BPaaS×AIによるAIエージェント制作代行サービス「CASTER NEO」の提供を開始した。顧客のビジネス・組織課題に合わせてフルカスタマイズし、要件定義から実装、さらには保守までを一貫してサポートすることでAI活用を強力に支援するサービスとなっており、ベーシック(30万円(税抜)/月)、スタンダード(50万円(税抜)/月)、プレミアム(個別対応)の3つのグレードに分けられる。
2. 「AIファースト経営」への移行
同社は、経営から実務に至るまでのすべての業務オペレーションにおいてAI駆動化を実装し、「AIファースト経営」へ移行することを宣言した。具体的には、1) 資料をAI用に最適化されたマークダウンファイル形式に切替え、文書管理を効率化、2) 社内問い合わせ業務をAIチャットポット対応で自動化し、迅速かつ効率的な業務運営を実現、3) 社内でAI活用のノウハウを蓄積し、クライアント企業へのAIソリューション提供の強化などが挙げられる。
3. マネーフォワードとの連携強化
2024年5月に資本業務提携を締結したマネーフォワード<3994>※1とは連携強化に向けた協議を進めている。具体的には、1) 経理専門商材のPoC開始※2、2) 両社代表を交えたステアリングコミッティの毎月開催、3) 事業拡大に向けた、経理専門人材の確保などに取り組み、一定の前進が図られた。やや前のめりで人材獲得を実施したことが中間期におけるコスト要因となったことは否めないが、今後の事業拡大や稼働率の調整等により適正なコストコントロールを効かせるフェーズへと進める考えだ。経理専門人材の獲得は難しいと言われているが、同社のノウハウを生かした業務プロセスの細分化により、様々な人材を各領域で活用できる仕組みとなっており、同社の採用力の高さやワークフロー構築力が発揮されている。
※1 マネーフォワードは個人資産管理サービス及びクラウドサービスを提供している。資本業務提携の内容や目的については前回フィスコレポート(2024年8月29日発行)を参照。
※2 PoCとはProof of Concept(概念実証)の略称。マネーフォワードクラウドと「CASTER BIZ accounting」による新商材のPoCを開始し、市場での競争力を高める新製品開発を進めている。
4. ベトナム子会社の設立
2025年4月にはシステム開発拠点としてベトナム子会社CASTER TECH VIETNAM CO., LTD.を設立した。もともと子会社であるグラムスの開発は大部分がベトナムにあったことから、そのオフショア開発のノウハウを活かす格好だ。これまで外注していた社内システムやAIエージェント関連の開発業務の移管(グループ内製化)を推進中である。
5. EC向け独自AI搭載SaaSサービスの提供開始(グラムス)
子会社のグラムスがEC運営の業務効率支援に向けて独自AIを搭載したSaaSサービス「SASAGE.APP」を開始した。特徴的なのは、「Claude」や「ChatGPT」のような汎用AIと呼ばれるものとは違い、撮影、採寸、原稿作成(それぞれの頭文字をとって「ささげ業務」と呼ばれている)のような出品業務に係る特殊領域に対して、非常に綿密にチューニングされたAIというところである。同社では、本サービスを通じて、EC企業向け業務効率化支援の付加価値をさらに高めるとともに、この技術を他の領域にも転用する方針だ。
6. オンライン・オフラインイベントへの参加
同社はWebマーケティングを主軸としており、その方針自体は変わらないが、新たなチャネルとして、セミナー登壇や展示会のようなオフラインを含め、様々なイベントにも挑戦する考えである※。特に、ブース設立やパース設計については急速にAI実装が進んでおり、同社が目指す世界やポテンシャルを発信するとともに、実際に体感する機会を増やすことは、話題性や知名度を高めるうえでも効果があると考えられる。
※ 最近の出展としては、「経理の未来を大予想!AI活用と人材育成の新潮流」((株)LayerXの共催オンラインイベントセミナーに登壇)、ビジネスカンファレンスイベント「GROWTH 祭TOKYO 2025」(シルバースポンサーとして協賛・スポンサーブース出展)、「BOXIL EXPO 人事・総務展2025春」(シルバースポンサーとして協賛・セミナー登壇)、EC/通販業界のビジネスイベント「イーコマースフェ東京2025」(ブース出展・セミナー登壇)などがある。
■業績見通し
期初予想を据え置き、ARPU改善やコスト最適化により営業利益の黒字転換を目指す
1. 2025年8月期の業績予想
2025年8月期の連結業績予想については、期初予想を据え置き、売上高を前期比13.4%増の5,037百万円、営業利益を10百万円(前期は151百万円の損失)、経常損失は18百万円(同158百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失を13百万円(同217百万円の損失)と増収及び営業利益の黒字転換を見込んでいる。
下期は、既存顧客へのクロスセル・アップセルによるARPU改善が業績の伸びをけん引するとともに、アライアンスによる新規案件獲得を強化する方針である。
損益面でも、新規顧客獲得に向けた広告費配分の調整や受注動向に合わせた稼働率の維持によりコスト最適化を図る。したがって、上期における出遅れ分についてはARPU改善とコスト最適化でカバーし、通期での営業利益の黒字転換を目指す。
2. 弊社の見方
通期予想達成のためには、下期の売上高2,746百万円、営業利益283百万円が必要となる。顧客資産の積み上げや解約率の低位安定に加え、ARPU改善も期待できることから、売上高予想は十分に達成可能であると弊社では見ている。一方、利益予想の達成は高いハードルと言わざるを得ないであろう。もちろん、同社ビジネスモデルの収益性(売上総利益率)自体は非常に高いことから、広告費や人件費を抑えれば理論的に達成できない水準ではない。したがって、今後の成長と足元収益のバランスをどう取っていくのか政策的な判断によるところが大きいとの見方もできる。同社は成長を優先すべきステージにあると弊社では考えており、先行投資を継続しつつ、ARPU改善やコスト最適化によりどこまで予想水準に近付けるかがポイントになると見ている。いずれにしても、第3四半期の数値の出方に注目したい。また、戦略的な視点からは、マネーフォワードとの連携強化やAIエージェントの活用による新たな展開に期待したい。特に大型案件(高単価)が期待できる経理領域の深掘りがどのように本格的に立ち上がってくるのか、今後の方向性や成長スピードを占ううえでも重要な判断材料となるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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