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キャスター Research Memo(5):過去最高売上高を更新するも、人的投資の拡大等により損失幅が拡大
2025/05/29 12:05
*12:05JST キャスター Research Memo(5):過去最高売上高を更新するも、人的投資の拡大等により損失幅が拡大
■キャスター<9331>の決算概要
1. 2025年8月期中間期の業績概要
2025年8月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比4.4%増の2,290百万円、営業損失が273百万円(前年同期は8百万円の損失)、経常損失が274百万円(同4百万円の損失)、親会社株主に帰属する中間純損失が279百万円(同14百万円の損失)と増収ながら損失幅が拡大した。
BPaaS事業において大型案件の解約による影響を受けたものの、低ロットサービスの需要拡大に伴う稼働社数の増加に加え、グラムスの連結効果やAIエージェント関連の収益化などにより増収を確保し、過去最高売上高(中間期ベース)を更新した。
ただ、2025年2月末の稼働社数は1,295社(前期末比103社増)と大きく伸びた一方、ARPUは低ロットサービスの伸びとともに低下しており、下期以降はアップセルの強化等により改善を図る考えだ。
一方、損益面で損失幅が拡大したのは、大型案件の解約やARPU低下による影響のほか、マネーフォワードとの連携強化を見据えた積極的な人材投資に伴う一時的な負担増に起因する。
財政状態については、現金及び預金の減少により総資産が前期末比20.2%減の1,960百万円に縮小した。一方、自己資本も中間純損失の計上に伴い同25.3%減の823百万円に減少し、それらの結果、自己資本比率は42.0%(前期末は44.9%)に若干低下した。もっとも、現金及び預金は依然として1,170百万円を確保しており、財務の安全性に懸念はない。
セグメント別の業績は以下のとおりである。
(1) BPaaS事業
売上高は前年同期比0.5%増の1,777百万円、セグメント利益は同40.7%減の277百万円と増収減益となった。低ロットサービス(My Assistant)の需要拡大により稼働社数が順調に拡大した一方、その反動によるARPU低下や第1四半期での大型案件解約(採用領域)によるマイナス分をカバーしきれず、緩やかな増収に留まった。注力する経理領域も前年同期比では大きく伸長するも、アップセル効果が限定的に留まり想定を下回った。損益面では、大型案件解約の影響に加え、マネーフォワードとの連携強化を見据えた積極的な人材投資に伴う一時的な負担増により大幅な減益となった。
(2) その他事業
売上高は前年同期比20.6%増の513百万円、セグメント損失は93百万円(前年同期は120百万円の損失)と増収及び損失幅が改善した。派遣、紹介が堅調に推移したほか、グラムス連結効果が増収に大きく寄与した。また、2024年9月に設立した子会社LUVOにおけるAIエージェント関連※もまだ小規模ながら収益化されてきた。
※ 同社のオペレーション構築力と人的リソースの拡充力に生成AIを組み合わせた業務効率化支援構想。2025年3月にはAIエージェントの制作代行サービス「CASTER NEO」の提供も開始した。
2. KPIの四半期推移
四半期ごとのKPIを見ると、低ロットサービスの需要拡大を取り込み、稼働社数は順調に拡大した一方、低ロットの伸びがARPUの低下を招いた。ただ、下期以降はアップセル強化と新規顧客獲得の比重(広告費配分)を調整することでARPU改善を図る考えである。また、解約率は想定よりも安定して低水準を維持できており、第1四半期に一旦落ち込んだMRRも足元では改善傾向にある。
一方、広告効果に関わるKPIに目を向けると、稼働社数の拡大を図りながらCACは低下傾向をたどっており、目論見どおりの獲得効率を実現している。一方、LTVはARPU低下等による売上総利益率低下の影響を受けて悪化したものの、一時的なものとの見方ができる。それらの結果、ユニットエコノミクスは500%~700%の適正水準の範囲内にあり、広告投資は過不足ない状況にあると言える。
3. 2025年8月期中間期の総括
2025年8月期中間期を総括すると、稼働社数が順調に拡大したことやAIエージェント関連が立ち上がってきたことは評価できる一方、損失幅の拡大は明らかにネガティブな材料であり評価の難しい進捗となった。もっとも、損失幅の拡大は、1) 大型案件の解約、2) 今後を見据えた人的投資、3) ARPU低下(アップセルの遅れ)の大きく3つの要因によるものであり、ビジネスモデルの構造的な収益性や優位性の変化を示すものではなく、先行投資やタイミングによる要素が大きいと弊社では見ている。そして何よりも顧客資産を順調に積み上げていることは、2025年8月期のポテンシャル(潜在需要の大きさやアップセルの可能性)を測るうえでも重要な判断材料と言えるだろう。また、活動面では、2025年8月期より本格参入したAIエージェント関連や高単価が期待できる経理領域などが具体的に動き始めたことは今後に向けて注目すべきポイントである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<HN>
■キャスター<9331>の決算概要
1. 2025年8月期中間期の業績概要
2025年8月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比4.4%増の2,290百万円、営業損失が273百万円(前年同期は8百万円の損失)、経常損失が274百万円(同4百万円の損失)、親会社株主に帰属する中間純損失が279百万円(同14百万円の損失)と増収ながら損失幅が拡大した。
BPaaS事業において大型案件の解約による影響を受けたものの、低ロットサービスの需要拡大に伴う稼働社数の増加に加え、グラムスの連結効果やAIエージェント関連の収益化などにより増収を確保し、過去最高売上高(中間期ベース)を更新した。
ただ、2025年2月末の稼働社数は1,295社(前期末比103社増)と大きく伸びた一方、ARPUは低ロットサービスの伸びとともに低下しており、下期以降はアップセルの強化等により改善を図る考えだ。
一方、損益面で損失幅が拡大したのは、大型案件の解約やARPU低下による影響のほか、マネーフォワードとの連携強化を見据えた積極的な人材投資に伴う一時的な負担増に起因する。
財政状態については、現金及び預金の減少により総資産が前期末比20.2%減の1,960百万円に縮小した。一方、自己資本も中間純損失の計上に伴い同25.3%減の823百万円に減少し、それらの結果、自己資本比率は42.0%(前期末は44.9%)に若干低下した。もっとも、現金及び預金は依然として1,170百万円を確保しており、財務の安全性に懸念はない。
セグメント別の業績は以下のとおりである。
(1) BPaaS事業
売上高は前年同期比0.5%増の1,777百万円、セグメント利益は同40.7%減の277百万円と増収減益となった。低ロットサービス(My Assistant)の需要拡大により稼働社数が順調に拡大した一方、その反動によるARPU低下や第1四半期での大型案件解約(採用領域)によるマイナス分をカバーしきれず、緩やかな増収に留まった。注力する経理領域も前年同期比では大きく伸長するも、アップセル効果が限定的に留まり想定を下回った。損益面では、大型案件解約の影響に加え、マネーフォワードとの連携強化を見据えた積極的な人材投資に伴う一時的な負担増により大幅な減益となった。
(2) その他事業
売上高は前年同期比20.6%増の513百万円、セグメント損失は93百万円(前年同期は120百万円の損失)と増収及び損失幅が改善した。派遣、紹介が堅調に推移したほか、グラムス連結効果が増収に大きく寄与した。また、2024年9月に設立した子会社LUVOにおけるAIエージェント関連※もまだ小規模ながら収益化されてきた。
※ 同社のオペレーション構築力と人的リソースの拡充力に生成AIを組み合わせた業務効率化支援構想。2025年3月にはAIエージェントの制作代行サービス「CASTER NEO」の提供も開始した。
2. KPIの四半期推移
四半期ごとのKPIを見ると、低ロットサービスの需要拡大を取り込み、稼働社数は順調に拡大した一方、低ロットの伸びがARPUの低下を招いた。ただ、下期以降はアップセル強化と新規顧客獲得の比重(広告費配分)を調整することでARPU改善を図る考えである。また、解約率は想定よりも安定して低水準を維持できており、第1四半期に一旦落ち込んだMRRも足元では改善傾向にある。
一方、広告効果に関わるKPIに目を向けると、稼働社数の拡大を図りながらCACは低下傾向をたどっており、目論見どおりの獲得効率を実現している。一方、LTVはARPU低下等による売上総利益率低下の影響を受けて悪化したものの、一時的なものとの見方ができる。それらの結果、ユニットエコノミクスは500%~700%の適正水準の範囲内にあり、広告投資は過不足ない状況にあると言える。
3. 2025年8月期中間期の総括
2025年8月期中間期を総括すると、稼働社数が順調に拡大したことやAIエージェント関連が立ち上がってきたことは評価できる一方、損失幅の拡大は明らかにネガティブな材料であり評価の難しい進捗となった。もっとも、損失幅の拡大は、1) 大型案件の解約、2) 今後を見据えた人的投資、3) ARPU低下(アップセルの遅れ)の大きく3つの要因によるものであり、ビジネスモデルの構造的な収益性や優位性の変化を示すものではなく、先行投資やタイミングによる要素が大きいと弊社では見ている。そして何よりも顧客資産を順調に積み上げていることは、2025年8月期のポテンシャル(潜在需要の大きさやアップセルの可能性)を測るうえでも重要な判断材料と言えるだろう。また、活動面では、2025年8月期より本格参入したAIエージェント関連や高単価が期待できる経理領域などが具体的に動き始めたことは今後に向けて注目すべきポイントである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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