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イード Research Memo(7):2025年6月期は期初計画を据え置くも利益ベースでは上振れ余地あり

*15:07JST イード Research Memo(7):2025年6月期は期初計画を据え置くも利益ベースでは上振れ余地あり
■イード<6038>の業績動向

3. 2025年6月期の業績見通し
2025年6月期の連結業績は、売上高で前期比9.4%増の6,700百万円、営業利益で同12.6%増の590百万円、経常利益で同7.7%増の590百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同126.8%増の370百万円と期初計画を据え置いた。売上高は過去最高を更新し、営業利益と経常利益は3期ぶり、親会社株主に帰属する当期純利益は4期ぶりの増益に転じる見通しだ。

中間期までの進捗率は売上高で45.9%、営業利益で57.6%となっており、直近3期間の平均進捗率(売上高48.6%、53.6%)※と比べて、売上高はやや下回るものの営業利益は逆に上回っている。下期は米国トランプ政権の関税率引き上げの動向など不透明感が強く、関連業界において広告出稿意欲が冷え込むリスクはあるものの、同社は「メディアポートフォリオ戦略」により幅広い業界のメディアを展開しているほか、「360度ビジネス」により広告出稿に依存しない収益構造を構築しつつあることから、下期の収益も堅調に推移する可能性が高いと弊社では見ている。なお、同社は2025年1月に投資有価証券売却益72百万円を特別利益として第3四半期に計上することを発表したことから、親会社株主に帰属する当期純利益については計画を上振れする公算が大きい。

※ (3期間累計の中間期業績)÷(3期間累計の通期業績)により算出。

国内のインターネットメディア業界はネット人口の頭打ちによるユニークユーザー(以下、UU)数やPV数の成長鈍化、またクッキー制限等による広告単価下落の影響などもあり、メディア運営会社の収益源となっていたネット広告売上が苦戦し、一部の大手運営会社を除いて厳しい収益環境が続いている。同社はこうした課題に対する対策として、1) 会員基盤の充実とLTVの向上、2) 広告以外のビジネス開発(360度ビジネス)、3) M&Aによる規模拡大、4) メディア運営支援による相互扶助型連合の拡大、の4点に引き続き取り組むことで、ネット広告に依存しない収益基盤の構築を今後も推進する。

特に広告以外のビジネス開発については、メディアの有料会員サービスによるサブスク収入が順調に拡大している。現状は自動車やネットセキュリティ分野で法人向けを中心に伸びているが、今後は金融や教育、エンターテインメント分野などでも開発を進めていくものと予想される。また、Webメディアとリアルイベントの組み合わせによるプロモーションが教育分野で成功しているほか、ゲーム業界就活イベントとして2024年6月と12月に開催した「キャリアクエスト」も8社のゲーム会社が出展し、就職志望学生も多く集まるなど好評を得たことで、今後はアニメ業界など他の業界でも同様の取り組みを進めていくことを検討している。映画前売券等のプロモーションツールとなる「エンタメプリント※1」も認知度向上により最近は大手企業からも声が掛かるようになってきたほか、新たに開始した「ゲムマイド※2」サービスも、実績が出始めており、今後も映画やゲーム以外にコンテンツを広げていきながら収益拡大を目指す。こうした成功モデルを他の業界に横展開することで収益性を向上させていくほか、M&Aや協業により領域自体の拡充も図っていく戦略だ。

※1 コンビニエンスストアに設置されているマルチコピー機で、人気キャラクター、アイドル、ゲームなどのブロマイドをはじめとした様々なジャンルのコンテンツを購入・プリントできるサービスで、「映画前売券付きブロマイド」などIPを活用したプロモーション施策として生かすことができる。2024年6月期の売上規模は数千万円。
※2 コンビニエンスストアでゲームが印刷できるサービス。

前期から取り組んでいるAI技術活用による生産性向上については、情報収集や制作・編集工程に加えて配信工程でも活用し始めており、全体の工数削減に寄与している。AI導入で余剰となった人的リソースについては、サブスクビジネスなど注力事業に再配置することで最適化を進め、人件費率を抑制することによって収益性向上を図る。


2026年6月期業績目標の達成はM&A次第だが、持続的な利益成長を重視

4. 中期目標
同社は2021年8月に発表した中期計画のなかで、最終年度となる2026年6月期に売上高100億円、調整後EBITDA12億円を目標に掲げた。今後2年間で売上高を1.6倍、調整後EBITDAを1.8倍に拡大することになるが、比較的規模の大きいM&Aが必要になると思われるため、目標達成はM&A次第となる。ただ、CP事業を主軸に「メディアポートフォリオ戦略」と「360度ビジネス」に取り組み、新規事業開発も積極的に進めながら利益成長を継続することを重視していることから、目標達成ありきでM&Aを行うことはなく、あくまでも収益性も考慮したうえで実行していく方針だ。インターネットメディア業界では経営環境の厳しさから売却案件が増え、買収コストも低廉化している状況にある。同社にとって今後1〜2年は、M&Aによって成長加速を図る好機になると弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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