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技術承継機構:製造業に特化した連続買収企業、譲受会社のオーガニック成長と新規M&Aの両輪で成長へ

*15:12JST 技術承継機構:製造業に特化した連続買収企業、譲受会社のオーガニック成長と新規M&Aの両輪で成長へ
技術承継機構<319A>は中小製造業各社の技術を次世代に繋ぐことをミッションとして2018年に設立された。製造業と製造業に関連する事業の譲受及び譲受企業の経営支援に取り組む連続買収(譲受)企業というユニークな立位置で、技術を持つ中小製造業複数社が一緒になり強固な企業グループを構築することを目指している。なお、買収ファンド(PEファンド)とは違い、譲受した会社の譲渡は基本的には想定していない。創業以来、昨年12月までに10社の企業を譲受している。同社は、企業の譲受にあたって、主にM&Aアドバイザーや金融機関等から譲受候補となる企業の紹介を受けており、その対価として手数料を支払っている。創業から2024年12月までの期間に同社に持ち込まれたM&A案件の数は累計1,717件であり、2024年においては単年で約400-500件が持ち込まれている。

国内ではGENDA<9166>やヨシムラフードホールディングス<2884>、ジャパンエレベーターサービス<6544>など連続買収企業が存在するが、製造業に特化した企業は同社のみとなる。海外では、米国Danaher(ダナハー)社や英国Halma(ハルマ)社、スウェーデンIndutrade(インデュトレード)社などが参考企業となる。過度の統合に拘らず、個社の自主独立性を尊重する一方で管理・改善はしっかり行う体制を敷いている。

2024年12月期の売上高は前年同期比18.5%増の11,051百万円、営業利益は同72.6%増の1,517百万円で着地した。積極的にM&A案件の検討を行い、新たに1社(株式会社ティオック)の譲受を実施。また、既存譲受企業において取り組んできた製品販売の強化やコストの削減により業績は堅調に推移している。2025年12月期の売上高は前期比5.0%増の11,600百万円、調整後EBITDAは同11.4%増の2,400百万円を見込む。これは新規譲受(M&A)の影響を一切含まないオーガニック成長のみの業績予想で、2025年12月期も新規の譲受を数件予定しており上振れ余地がある。新規譲受の発表と併せて、必要に応じてガイダンスの上方修正のアナウンスを実施するようだ。

同社はM&Aの各ステップで強みを有しており、市場環境の追い風を受けて連続的なM&Aに取り組むための体制を有している。より具体的には、(1)高収益企業のみをスクリーニングするソーシング能力、(2)製造業に特化することにより深化した知見と業界ネットワークを通じた情報収集に基づく適切な投資判断、(3)個社の自主独立を重んじて売却を行わない独自のポジショニングやオーナーの社長続投希望に沿った解決策を提案する交渉力、(4)金融機関との強固な信頼関係に基づき固定低金利・長期・原則財務コベナンツなしといった好条件を目指す資金調達、といった点が挙げられる。

案件ソーシングについてはM&Aアドバイザー、銀行、証券会社等から紹介を受けるだけでなく、同社及び技術承継機構グループ各社でのソーシング活動も推進している。各社の独立性を維持しながらも、長期に亘る持続的な成長を後押しする事業承継の受け皿として独自の立ち位置を確立していると考えている。これにより、一定期間経過後の売却を前提とする買収ファンド(PEファンド)や従属する親子関係の発生及び組織の統合が必要となる場合が多い一般的な事業会社とはソーシング段階で明確に差別化できている。また、バリューアップノウハウのグループ内での展開やグループ会社間のベスト・プラクティスの共有が容易に可能である点も、売主候補に好印象を与える一因となっている。この点につき、買収ファンド(PEファンド)においては幅広い業種に投資するため製造業の知見は限定的であることから、同社の差別化ができているほか、事業会社においては同業種・隣接業種であれば経営支援可能であるが、主語は親会社であることが多いことから、同様に同社は差別化できている。これらの結果として、相対での案件組成ができており、仮に他の買い手候補と競合した場合においても価格以外の点を訴求することで譲受先として選択されている。

同社は今後、譲受会社のバリューアップを通じたオーガニック成長と、新規M&Aの両輪で中長期にわたる成長を図っていく。国内の製造業を取り巻く市場環境では、日本の中小企業336万社のうち黒字の中小製造業は12万社存在している。ただ、人口減少や高齢化など国内の社会問題により後継者不足で廃業危機に瀕する黒字企業は増加しているほか、PEファンドへの忌避感は未だ多くある状況だという。また、日本円に関しては、長年にわたり日本の貸出利率は他国に比して極めて低水準で推移する中で、特に地方では優良な貸出先が少ないため、調達する側に有利な条件を許容しやすい環境となっている。国内の製造業を下支えする基盤技術を持つ企業のM&Aを実現して非連続的な成長を掲げる同社にとっては強い追い風となっているようだ。PEファンドでも事業会社でもない独自のポジショニングを確立し、売主から選ばれる存在となっている同社の今後の成長には注目しておきたい。




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