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戸田工業 Research Memo(3):2023年11月に創業200周年を迎えた老舗の化学素材メーカー(2)

*13:13JST 戸田工業 Research Memo(3):2023年11月に創業200周年を迎えた老舗の化学素材メーカー(2)
■戸田工業<4100>の会社概要

(1) 電子素材事業
主に自動車、家電・ICT機器市場を事業フィールドとして製品展開を行っている。成長事業として磁石材料(フェライト、希土類磁性粉)、誘電体材料(チタン酸バリウム)、LIB用材料(持分対象)、次世代事業として軟磁性材料を注力事業として位置付けている。全体として金属・レアメタルなどの化学品の市況や為替変動による影響で見かけの売上が大きく変動するほか、利益面でも在庫や売価の価格連動の追従性及び稼働率で変動することがある。またLIB用前駆体材料は再生・転換事業として位置付けている。

(a) 磁石材料
2024年3月期の製品別売上高では磁石材料が118億円(セグメント内での構成比は65%)と電子素材事業で最大の売上部門となっている。中心はボンド磁石用のフェライト・希土類磁性コンパウンド(磁性粉末と樹脂を複合化した成形材料)である。ボンド磁石は近年、希土類磁性コンパウンド材料の売上構成比が半分弱まで高まり、高機能化が進んでいる。ボンド磁石は磁力面で焼結磁石に劣るものの、複雑形状加工成形、金属との一体成形、薄型化や長尺広幅化が可能。用途はエアコン向けや自動車向けモーター用途などの需要が拡大し、利用分野が広がっている。また射出成形ボンド磁石などを製造・販売する江門協立磁業高科技有限公司(以下、江門協立)を連結子会社化し、成形事業を含めた事業展開となっており、電子素材事業の中核を担っている。

(b) LIB用材料
ハイニッケルを中心とする車載用LIB用材料で、同事業はLIBの正極材料と、正極材料として焼成される前の化合物である前駆体などを手掛ける。2024年3月期は売上高36億円(セグメント内での構成比は20%)で、大半がカナダの連結子会社の前駆体売上で占められる。同社は磁気テープに代表される磁性酸化鉄市場の急激な規模縮小に対し、既存事業の技術を生かしLIB用正極材料の研究に着手、2000年にコバルト酸リチウム(LiCoO2)事業を開始、その後、LIB用正極材料3元系の事業化を迅速に実行した。2010年に伊藤忠商事<8001>と前駆体・正極材料製造のJV、2015年には欧州化学品メーカー大手BASFと日本を拠点にLIB用正極材料を展開するBASF戸田バッテリーマテリアルズ(同)(以下、BTBM)を立ち上げた。LIB用材料は、BTBM(BASFジャパン(株)66%、同社34%出資、持分法適用関連会社)が展開しており、2020年4月に操業を開始したプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(株)(以下、PPES)へNCM系正極材料の納入を開始した。またハイニッケル系正極材料の年間生産能力をバッテリーセル容量として45GWh分となる6万トンに引き上げ、2024年後半に生産を開始している。なお、BTBMは持分法適用関連会社であり、持分利益での連結寄与となる。LIB用材料は巨額の設備投資を必要とし、ブルーオーシャン的な事業でもあり、同社としては前駆体事業については再生・転換事業として捉え、BTBMについては成長事業として持分利益の獲得源と考えている。

(c) 誘電体材料
2024年3月期の売上高は10億円(前期比横ばい)に過ぎないが、今後の伸びを期待するのがMLCC向け誘電体材料である。コンデンサーは3大受動部品の1つで、その中でセラミックコンデンサーは国内におけるコンデンサー生産額の8割近くを占め、2023年度は国内生産額7,746億円を誇る。MLCCの主原料はチタン酸バリウムで、村田製作所<6981>、太陽誘電<6976>、TDK<6762>、サムスン電子(005930)が主たる製造会社となっている。同社は2004年にチタン酸バリウムの製造設備を新設し、同分野へ本格参入したが、特徴はその製造方法にある。チタン酸バリウムの製法は、原料を焼成する固相反応法が主流で、村田製作所などの大半はこの製法で内製化している。なお日本化学工業<4092>、富士チタン工業(株)などは湿式法と焼成を組み合わせたシュウ酸塩法を利用、固相反応法に対して細かい粒度が得られる。これらに対し同社は独自の湿式合成技術によって原料を高温・高圧下で反応させ、100nm未満の微細な粒子の粒度を均一に制御できる水熱合成法を生み出した。現在、セラミックコンデンサーでは、小型化、大容量化、高誘電率が求められ、0603サイズが最大比率を占め、さらに0402サイズ、0201サイズも通信モジュールやウェアラブル機器などの特定用途で利用が始まっている。同社は主に電極層向け共材用に供給、現在、スマートフォンの不振から足元の生産が低迷しているものの、自動車のEV化、自動運転化などで、高品質なMLCCが求められ、超微粒子チタン酸バリウムの需要がハイエンド品を中心に急速に高まると見られる。

(d) 軟磁性材料
2024年3月期の売上高は5億円と小さいが、TDMIを完全子会社化したことにより今後の成長事業である。軟磁性材料とは比較的小さい外部磁場で容易に磁化され、磁場が除かれるとほぼ完全に脱磁する特性を持つ材料で、酸化鉄を主成分とするフェライトのほか、鉄を主成分とする合金系などの磁性材料がある。同社は高透磁率、低損失、高飽和磁束密度を持つ磁性材料を素材からコンパウンドまでワンストップで提供している。主な用途は積層インダクタ(電気と磁気を相互作用させ電流制御を行う電子部品で、電流の安定化、電圧の平準化、交流電圧の変化などの電源用途)やメタル系軟磁性材料が使用されるSMD型インダクタ、スマートフォンのRFID機能、非接触給電用途があり、コイルから発生する磁束を通すコア部分やコイルに貼り付けるシート部分に使われる。

(2) 機能性顔料事業
機能性顔料事業は、主に塗料、複写機・プリンター、環境市場を事業フィールドとして、塗料用顔料、複写機・プリンター向けトナー・キャリア用材料などを中心に事業展開している。顔料は、創業以来の事業で、塗料市場は建築物や構造物向けの着色材料などで着実に用途が拡大した。複写機・プリンター市場は、ペーパーレス化、電子化などの影響で成熟化している。同事業については、将来的な発展を見据え、事業再生、事業転換を継続している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)



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