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アーレスティ Research Memo(4):品質と安定生産に裏打ちされた信頼と安心をグローバルで提供する(2)
2025/01/23 14:04
*14:04JST アーレスティ Research Memo(4):品質と安定生産に裏打ちされた信頼と安心をグローバルで提供する(2)
■事業概要
2. 事業概要
アーレスティ<5852>は事業をダイカスト事業、アルミニウム事業、完成品事業の3セグメントに分けている。これらのグローバルに展開する事業を支えているのは人材であり、同社は人材育成に力を入れている。グローバル各拠点で同一水準の技能や知識を受講できる教育体系としてグローバルRSTラーニング(RST学園)を開催し、創業時から蓄積してきたものづくりのノウハウを伝承している。また、全拠点で技術力・技術水準を向上させるために、全拠点の技術者が一堂に会して事例発表やグループディスカッションを行いながら問題の改善点を探るグローバルKaizenミーティングの開催、QCサークル活動など、品質や生産性を高めるための改善活動を推進している。現場の製造工程では、グローバルで個別改善や体質改善ができる力量を有し、そのプロセスを監督者に教えることができるGトレーナー(育成期間3年)、自拠点で個別改善ができる力量を有し、そのプロセスを部下に教えることができるEトレーナー(育成期間1年)を育成しているほか、次世代のアーレスティを担う幹部候補生を育成する場として期間1年間の「ものづくり塾」も開催している。また、技能を身につけるだけでなく、現場で起きていることを観察し、CAE(Computer-Aided Engineering:コンピュータ支援工学)を活用したデータ収集・解析・分析により現状把握することや、回帰分析、直交配列、応答曲面解析などの統計的手法を活用した改善活動に取り組んでいる。現在、海外拠点での受注増、生産拡大が進んでいるが、コロナ禍でグローバルなミーティングや教育訓練の場を設営しづらかったこと、雇用の流動化が激しい海外では育成したリーダーがすぐに転職してしまうことなどから、現場のリーダー不足による生産の不安定化がネックになっている。ここにきて、今まで蓄積した人材育成力の活性化が大いに期待される。
(1) ダイカスト事業
自動車向けを主とするダイカスト製品、ダイカスト用金型、ダイカスト周辺機器を製造・販売する。ダイカスト製品は、製品設計(湯流れ、強度等の解析含む)、金型製作、試作、量産(ダイカスト鋳造、機械加工など)というプロセスを踏むが、グループ会社の過半がその量産に至るプロセスや量産工程の一部を担うか、またはそのプロセスにおいて使用する設備装置の提供などを行っている。また、アルミニウム事業ではダイカスト用二次合金、鋳物用二次合金を製造しており、グループ内で原料から製品まで一気通貫生産できる体制を整えている。そのため、同社においては、良品だけを次工程に送るというアーレスティプロダクションウェイを徹底することができ、センシング技術を活用して各種データ(鋳造工程では流量、温度、速度、圧力などのパラメーター)を計測・収集・分析し、最適な良品製造条件を追究し、生産性向上・品質改善を行うOPCC(Optimal Process Condition Control:良品製造条件管理)活動は全工場で行っている。重点製品においては鋳造工程で2Dコードを付与し、各種製造パラメータ計測値と製品の品質を紐付け、統計的手法による品質管理を行っている。また同社は、より高い品質、高効率な生産が可能な独自ダイカスト工法の研究、開発を進めており、その技術力には定評がある。T7熱処理※が可能で、自動車のボディ部品等に要求される伸びや強度(0.2%耐力)を改善し、より高品質な大型肉薄製品への適用が可能なHiGF法(High GF Casting)、極めて機械的性質に優れた「桁違い品質」を生み出し、足回り製品を中心に適用範囲を大きく広げた独自工法として経済産業大臣賞を受賞したNI法(New Injection Casting)などの工法がダイカストの自動車部品への適用範囲を拡大している。
※ アルミニウム合金における熱処理の状態(Temper)を示し、T7は耐腐食性、寸法安定性、耐熱性向上を目的とした熱処理
グローバル展開している同社の最大の強みは、各工場において生産性と品質に関わるノウハウを共有し、製品、金型、生産設備の相互補完体制を整えているため、図面1つで各工場において同一品質の製品の生産・供給を可能とする「ワンプリントマルチロケーション」にある。国内の顧客が海外展開する場合も、海外で新たなサプライヤーを探す必要はなくなる。また、電動車に搭載されている「E-Axle」※1や「X in 1」※2は、駆動用モーターとインバーター、減速機など複数の部品を一体化しているため大型で複雑な形状・構造となるが、同社は4,000トンクラスの大型ダイカストマシンをはじめ200台以上のマシンを国内外に保有し、エンジンやトランスミッションを主力製品としているため、大型で複雑形状の製品を得意としていることも強みとなっている。
※1 イーアクスル:電動車両に使用される駆動用部品を統合したユニット。電動モーター、インバーター、ギアボックスを一体化している
※2 電動パワートレインの部品統合や効率化を図るシステム
さらに、アルミダイカストと異素材を最適に組み合わせ、重量や強度要求を満たす接合技術、また熱処理プロセスのCO2排出量を1/10に低減するレーザ熱処理技術やマルチマテリアルボディを実現する接合技術など車体軽量化、地球環境の未来に貢献する技術を保有していることも強みの1つだ。
日本では同社がダイカスト製品を製造・販売するほか、子会社3社(アーレスティ栃木、アーレスティ熊本、アーレスティ山形)が製品を製造し顧客の自動車メーカー等に供給している。海外では、北米において米国ウィルミントン社及びメヒカーナ社が製造・販売している。アジアにおいては、中国の広州阿雷斯提、合肥阿雷斯提及びインディア社が製造・販売している。
金型鋳物製品は、高圧で溶融金属を金型に射出するダイカストと異なり、低圧力で金型に流し込んで製造される高い強度や耐久性を持つ製品で、同社の東海工場が製造・販売している。
ダイカスト用金型は、同社が設計・販売を行うほか、日本ではアーレスティダイモールド浜松が製造している。北米ではメヒカーナ社が製造しており、アジアではタイエンジニアリング社が同社の金型設計の一部を行い、タイダイ社が製造・販売している。
ダイカスト周辺機器では、アーレスティテクノサービスが金型冷却装置国内シェアNo.1のジェットクールシステムなどを製造、販売している。ジェットクールシステムは、鋳造工程において焼付き、ひけ巣、圧漏れの発生しやすい金型部分の冷却制御をする装置で、金型の細い中子ピンに高圧水を流して間欠冷却する(国際特許取得済)。また、水環境の悪い地域でも使用できるクローズドジェットクールシステムを開発し、ゴミなどの堆積によるトラブル防止が可能、錆やスケールを軽減、さらに繰り返し水を循環するため排水が少なく、環境に優しいシステムとなっている。海外でも多くのダイカストメーカーで利用され、評価されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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■事業概要
2. 事業概要
アーレスティ<5852>は事業をダイカスト事業、アルミニウム事業、完成品事業の3セグメントに分けている。これらのグローバルに展開する事業を支えているのは人材であり、同社は人材育成に力を入れている。グローバル各拠点で同一水準の技能や知識を受講できる教育体系としてグローバルRSTラーニング(RST学園)を開催し、創業時から蓄積してきたものづくりのノウハウを伝承している。また、全拠点で技術力・技術水準を向上させるために、全拠点の技術者が一堂に会して事例発表やグループディスカッションを行いながら問題の改善点を探るグローバルKaizenミーティングの開催、QCサークル活動など、品質や生産性を高めるための改善活動を推進している。現場の製造工程では、グローバルで個別改善や体質改善ができる力量を有し、そのプロセスを監督者に教えることができるGトレーナー(育成期間3年)、自拠点で個別改善ができる力量を有し、そのプロセスを部下に教えることができるEトレーナー(育成期間1年)を育成しているほか、次世代のアーレスティを担う幹部候補生を育成する場として期間1年間の「ものづくり塾」も開催している。また、技能を身につけるだけでなく、現場で起きていることを観察し、CAE(Computer-Aided Engineering:コンピュータ支援工学)を活用したデータ収集・解析・分析により現状把握することや、回帰分析、直交配列、応答曲面解析などの統計的手法を活用した改善活動に取り組んでいる。現在、海外拠点での受注増、生産拡大が進んでいるが、コロナ禍でグローバルなミーティングや教育訓練の場を設営しづらかったこと、雇用の流動化が激しい海外では育成したリーダーがすぐに転職してしまうことなどから、現場のリーダー不足による生産の不安定化がネックになっている。ここにきて、今まで蓄積した人材育成力の活性化が大いに期待される。
(1) ダイカスト事業
自動車向けを主とするダイカスト製品、ダイカスト用金型、ダイカスト周辺機器を製造・販売する。ダイカスト製品は、製品設計(湯流れ、強度等の解析含む)、金型製作、試作、量産(ダイカスト鋳造、機械加工など)というプロセスを踏むが、グループ会社の過半がその量産に至るプロセスや量産工程の一部を担うか、またはそのプロセスにおいて使用する設備装置の提供などを行っている。また、アルミニウム事業ではダイカスト用二次合金、鋳物用二次合金を製造しており、グループ内で原料から製品まで一気通貫生産できる体制を整えている。そのため、同社においては、良品だけを次工程に送るというアーレスティプロダクションウェイを徹底することができ、センシング技術を活用して各種データ(鋳造工程では流量、温度、速度、圧力などのパラメーター)を計測・収集・分析し、最適な良品製造条件を追究し、生産性向上・品質改善を行うOPCC(Optimal Process Condition Control:良品製造条件管理)活動は全工場で行っている。重点製品においては鋳造工程で2Dコードを付与し、各種製造パラメータ計測値と製品の品質を紐付け、統計的手法による品質管理を行っている。また同社は、より高い品質、高効率な生産が可能な独自ダイカスト工法の研究、開発を進めており、その技術力には定評がある。T7熱処理※が可能で、自動車のボディ部品等に要求される伸びや強度(0.2%耐力)を改善し、より高品質な大型肉薄製品への適用が可能なHiGF法(High GF Casting)、極めて機械的性質に優れた「桁違い品質」を生み出し、足回り製品を中心に適用範囲を大きく広げた独自工法として経済産業大臣賞を受賞したNI法(New Injection Casting)などの工法がダイカストの自動車部品への適用範囲を拡大している。
※ アルミニウム合金における熱処理の状態(Temper)を示し、T7は耐腐食性、寸法安定性、耐熱性向上を目的とした熱処理
グローバル展開している同社の最大の強みは、各工場において生産性と品質に関わるノウハウを共有し、製品、金型、生産設備の相互補完体制を整えているため、図面1つで各工場において同一品質の製品の生産・供給を可能とする「ワンプリントマルチロケーション」にある。国内の顧客が海外展開する場合も、海外で新たなサプライヤーを探す必要はなくなる。また、電動車に搭載されている「E-Axle」※1や「X in 1」※2は、駆動用モーターとインバーター、減速機など複数の部品を一体化しているため大型で複雑な形状・構造となるが、同社は4,000トンクラスの大型ダイカストマシンをはじめ200台以上のマシンを国内外に保有し、エンジンやトランスミッションを主力製品としているため、大型で複雑形状の製品を得意としていることも強みとなっている。
※1 イーアクスル:電動車両に使用される駆動用部品を統合したユニット。電動モーター、インバーター、ギアボックスを一体化している
※2 電動パワートレインの部品統合や効率化を図るシステム
さらに、アルミダイカストと異素材を最適に組み合わせ、重量や強度要求を満たす接合技術、また熱処理プロセスのCO2排出量を1/10に低減するレーザ熱処理技術やマルチマテリアルボディを実現する接合技術など車体軽量化、地球環境の未来に貢献する技術を保有していることも強みの1つだ。
日本では同社がダイカスト製品を製造・販売するほか、子会社3社(アーレスティ栃木、アーレスティ熊本、アーレスティ山形)が製品を製造し顧客の自動車メーカー等に供給している。海外では、北米において米国ウィルミントン社及びメヒカーナ社が製造・販売している。アジアにおいては、中国の広州阿雷斯提、合肥阿雷斯提及びインディア社が製造・販売している。
金型鋳物製品は、高圧で溶融金属を金型に射出するダイカストと異なり、低圧力で金型に流し込んで製造される高い強度や耐久性を持つ製品で、同社の東海工場が製造・販売している。
ダイカスト用金型は、同社が設計・販売を行うほか、日本ではアーレスティダイモールド浜松が製造している。北米ではメヒカーナ社が製造しており、アジアではタイエンジニアリング社が同社の金型設計の一部を行い、タイダイ社が製造・販売している。
ダイカスト周辺機器では、アーレスティテクノサービスが金型冷却装置国内シェアNo.1のジェットクールシステムなどを製造、販売している。ジェットクールシステムは、鋳造工程において焼付き、ひけ巣、圧漏れの発生しやすい金型部分の冷却制御をする装置で、金型の細い中子ピンに高圧水を流して間欠冷却する(国際特許取得済)。また、水環境の悪い地域でも使用できるクローズドジェットクールシステムを開発し、ゴミなどの堆積によるトラブル防止が可能、錆やスケールを軽減、さらに繰り返し水を循環するため排水が少なく、環境に優しいシステムとなっている。海外でも多くのダイカストメーカーで利用され、評価されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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