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TKP Research Memo(3):「持たざる経営」を基本として早期収益化が可能な事業モデル

*14:03JST TKP Research Memo(3):「持たざる経営」を基本として早期収益化が可能な事業モデル
■事業概要等

1. 空間シェアリングによる市場創造型の事業展開
ティーケーピー<3479>が主力としてきた「貸会議室ビジネス」は、不動産オーナーから遊休資産・低収益物件・不採算資産を割安で借り上げ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、シェアリングエコノミーとして付加価値を提供するというものである。不動産オーナーから不動産を賃貸などにより大口取引(割安)で仕入れ、貸会議室などに利用できるように照明・カーペット・壁紙などリノベーションを行うとともに、ケータリングや宿泊、各種オプションなど周辺サービスを付加する。顧客は主に会議室利用を求める法人であり、顧客側にとっては自社で会議室を保有するのに比べ、費用の削減、業務の集約化、多目的の利用が可能になるなどのメリットが多い。したがって、同社の事業は、大口取引を望む供給側と小口販売・シェアリングを望む需要側をうまくつないでいると言える。さらには、スペースにコンテンツサービス(運営オペレーションやシステム、研修パッケージ等)を付加したソリューション提供により、その時々の需要に機動的に対応していくことで、スペース当たりの収益性を向上させる方向性も描いている。

さらに「持たざる経営」にも特徴がある。仕入れは賃貸契約を主軸としているうえ、変動家賃(売上・利益歩合等)が52.8%を占める(2024年8月末時点)ため、不動産価格や景気変動による業績への影響は比較的小さく、通常の不動産会社が有するリスクとは異なる点に注目したい。ただ、安定的に高稼働率が期待できるホテル事業については、あえて一部を自社所有することにより高収益性を確保するとともに、いつでも流動化できるような準備をしている。

2. 収益モデルの特徴
「貸会議室ビジネス」は、時間貸しによるフロー型の収益モデルである。TKP貸会議室の利用用途は多種多様であり、基本的な会議室の稼働に加え、料飲や企画、備品レンタル等の周辺サービスをどれだけ付加できるかが成長のポイントとなるため、同事業は稼働率ではなく「坪当たり売上高」をKPI(重要業績評価指標)としている。料飲の需要回復に加え、ソフト領域(イベントプロデュース等)の拡充により、「坪当たり売上高」の拡大を目指す。オープンより平均3ヶ月で損益分岐点に到達し、12ヶ月で巡航速度に達することから、比較的早期に収益化が可能な収益モデルと言える。

3. 拠点ネットワーク
TKPは国内の主要都市を中心に267拠点・2,103室(16.0万坪)の法人向け貸会議室を展開している(2024年8月末時点)。利用目的や規模・予算などに合わせた6つのグレードに分かれており、単価の高いものから、エスクリ<2196>との共同ブランドである「CIRQ(シルク)」59施設・216室※1、ガーデンシティPREMIUM(GCP)31施設・342室、ガーデンシティ(GC)43施設・496室、カンファレンスセンター(CC)52施設・658室、ビジネスセンター(BC)23施設・181室、スター貸会議室27施設・54室で構成される。また、「レクトーレ」や「石のや」、フランチャイズで運営する「アパホテル」等の宿泊施設内には32施設・156室※2を有している。

※1 2020年7月に全国で結婚施設を運営するエスクリとの資本業務提携により開始した。平日をメインにエスクリの遊休施設を共同ブランド「CIRQ」に転換し、顧客企業のパーティや懇親会の会場として活用するものである。なお、「CIRQ」の施設数には、2024年6月に業務提携したノバレーゼのブライダル施設(35施設)も含まれている。
※2 このうち、直営施設は28施設(開業前を含む)である。

4. 周辺事業
貸会議室ビジネスを行っている他の企業との差別化要因の1つに周辺サービスの展開が挙げられる。同社は、料飲、オプション、宿泊などの提供を通じて、顧客の幅広いニーズに応えている。料飲については、ケータリング、弁当、カフェ、レストランからなり、特にケータリングや弁当は貸会議室での懇親会など食事を伴う用途展開に欠かせない周辺サービスとなってきた。なお、コロナ禍の影響により苦戦した料飲部門(ケータリング)については一旦縮小(外注化)したが、需要回復に伴い再度内製化を進めており、足元業績の底上げに寄与している。

また、同社は幅広いオプションも提供している。一例を挙げると、同時通訳システム・テレビ会議システムの提供、研修コーディネート、映像・音響・照明機材の設置・運用、オフィス家具や機材レンタルのほか、コロナ対策用備品などがあり、顧客の利便性を高める内容となっている。ここ数年は、コロナ禍をきっかけにオンラインイベント需要が増加したことで、ウェビナー案件が伸びてきたようだ。また、リアルイベントの再開とともに、エンターテインメント性の高いイベントをプロデュースする機会も増えており、スペースの販売からスペースでのコンテンツを提供する会社への進化に向け、周辺サービスによる付加価値提供の重要性が高まっている。

さらには、顧客からの要望により宿泊研修施設(直営28施設 ※開業前含む)も提供しており、研修旅行や社員旅行の際などに使用されている。直営施設として、リゾート型セミナーホテル「レクトーレ」(7施設)、ハイクラスなリゾート型セミナー旅館「石のや」(伊豆長岡・熱海の2施設)、都市型リゾート宿泊施設「ベイサイドホテル アジュール竹芝」のほか、新たに開始した自社ブランドの「TKPサンライフホテル」を運営している。また、フランチャイズ運営施設としては、会議室併設型のハイブリッドホテルとして「アパホテル」(15施設)を展開している(2024年8月末時点)。

昨今は大企業であっても、宿泊施設を自社で保有していることは少なく、また保有していてもコスト上、運営が難しいことが多い。同社はそのような企業ニーズを取り込み、リピート率の向上を狙う。また、高級旅館として有名な「石亭」は稼働率の低さから経営不振に陥っていたが、同社が「石のや」としてリブランディングし、平日の法人需要を取り込むことで経営を改善するなど、資産の有効活用の観点からもメリットが多い。加えて、貸会議室だけでなく、食事・機器・宿泊場所・交通手配までワンストップで一連のサービスを提供しており、顧客にとって利便性の高い内容であることが、同社が幅広い顧客に支持されているゆえんと言える。足元ではアフターコロナに向けて、宿泊研修を通じたコミュニケーションの活性化や、ワーケーションによる働き方改革を進める企業も出てきており、需要は拡大傾向にあるようだ。今後はアジア各国で需要が高まるインバウンドMICE※の取り込みも見据える。

※ 企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。(国土交通省観光庁のホームページより引用)

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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