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極東貿易 Research Memo(6):事業ポートフォリオ戦略の最適化と大型新規事業の開発を目指す
2024/11/22 14:06
*14:06JST 極東貿易 Research Memo(6):事業ポートフォリオ戦略の最適化と大型新規事業の開発を目指す
■極東貿易<8093>の中期経営計画と成長戦略
同社は、中長期的な発展に資する取り組み計画として、2021年5月に中期経営計画「KBKプラスワン2025」(2022年3月期~2026年3月期)を策定した。この計画では事業ポートフォリオの最適化を実行し、注力すべき事業領域を選別して収益力の強化を目指すとともに、サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資を実行することで、新たな収益の源泉を創出するとしている。
1. 中期経営計画「KBKプラスワン2025」の概要
・環境・社会・ガバナンス体制(ESG)
サステナブルな社会を実現していくために、同社が培ってきた技術や顧客資産を生かした多様なESGビジネスを展開し、企業価値を高める。
・事業戦略(事業ポートフォリオ戦略)
新規事業創出のために3つの事業部門を横断したプロジェクトチームを設置した。また、5年間で総額50億円の投資枠(M&A)を設定した。5年~10年展望で種をまき、新しい事業の柱を同時並行で複数育成する。
・財務・資本戦略
ROE5.4%以上の水準を目指し資本効率性の向上を図る。自己資本を3年間積み増さず、資本効率性も考慮に入れながら、積極的な株主還元(前半3期は配当性向100%)にも取り組む。
・株主価値/企業価値の向上
資本コストを上回るリターンの確保とともに、東証プライム市場(流通株式時価総額100億円以上)の上場条件を満たす。
2. 中期経営計画(数値目標)の見直し
同社は、中期経営計画の前半3年間(2022年3月期~2024年3月期)で、事業ポートフォリオの最適化や新規事業分野への資源配分、株主価値向上のための施策を進めてきた。2024年3月期には、コロナ禍の影響から回復し、収益改善が見られるようになったが、ウクライナ情勢や中国経済の低迷、成長投資の遅れなどにより、当初の目標との差が生じてきている。そのため、2026年3月期の数値目標を再設定し、連結経常利益は当初目標の25億円から19億円に、ROEは当初目標の8.0%から5.4%と修正した。
なお、数値目標の一つである「M&Aなど投資枠」(計画期間5年間で総額50億円)の設定はそのまま継続し、引き続き成長投資に取り組む。
中期経営計画の最大の目玉は、新規ビジネスの開発と育成
3. 中期経営計画3期目の進捗状況
(1) サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資実行
1) 営業組織の統合
同社は2022年4月1日付で営業組織を統合した。基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門の5つの営業部を統合して、「産業インフラソリューショングループ」へ、産業素材関連部門の3つの営業部を統合して「マテリアルソリューングループ」へと、2つの営業グループに統合した。
営業組織の統合を行った狙いは3つある。第1に、事業特性や営業特性に適した事業戦略とその実行組織の再編である。2つの営業グループ(産業インフラソリューション、マテリアルソリューション)は、設備エンジニアリング系ビジネスと素材サプライヤー系ビジネスと定義され、売り方やビジネスのやり方が異なる。今後は、それぞれの営業組織で事業戦略と営業戦略を策定し実行する。第2に、将来的に顧客のニーズに応じてプロジェクトチームで動けるよう柔軟な営業体制を組めるようにする。第3に、顧客情報や専門的知見、ノウハウを組織で共有することで営業人材の育成強化につなげる。今回の営業組織改革は合理化や人員削減などの守りの組織改革ではなく、戦略的意味を持った攻めの組織改革であることを付け加えておく。
2) 事業ポートフォリオの再編と強化
同社では、営業組織改革を機に、事業セグメントの再編も同時に行った。2023年3月期より、「基幹産業関連部門」と「電子・制御システム関連部門」を統合して「産業設備関連部門」を新設し、従来の「産業素材関連部門」「機械部品関連部門」で3事業セグメント体制とした。
その背景には、カーボンニュートラル(脱炭素)の潮流を見据え、同社の火力発電所関連の事業から撤退すると決断したこと、電子・制御システム関連部門において主力事業であった「計装システム(火力発電所向け制御装置)」から撤退したことで事業規模が圧倒的に小さくなり、単独で事業セグメントを組む必要がなくなったことがある。そのため実質的には基幹産業関連部門に電子・制御システム関連部門を吸収した形となった。
2022年3月期からの会計基準変更により、売上高・売上総利益のトップは基幹産業関連部門セグメントから機械部品関連部門セグメントへ交代となった。中長期的に事業部門ごとに事業ポートフォリオの見直しを図り、リソースを再配置する方針としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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■極東貿易<8093>の中期経営計画と成長戦略
同社は、中長期的な発展に資する取り組み計画として、2021年5月に中期経営計画「KBKプラスワン2025」(2022年3月期~2026年3月期)を策定した。この計画では事業ポートフォリオの最適化を実行し、注力すべき事業領域を選別して収益力の強化を目指すとともに、サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資を実行することで、新たな収益の源泉を創出するとしている。
1. 中期経営計画「KBKプラスワン2025」の概要
・環境・社会・ガバナンス体制(ESG)
サステナブルな社会を実現していくために、同社が培ってきた技術や顧客資産を生かした多様なESGビジネスを展開し、企業価値を高める。
・事業戦略(事業ポートフォリオ戦略)
新規事業創出のために3つの事業部門を横断したプロジェクトチームを設置した。また、5年間で総額50億円の投資枠(M&A)を設定した。5年~10年展望で種をまき、新しい事業の柱を同時並行で複数育成する。
・財務・資本戦略
ROE5.4%以上の水準を目指し資本効率性の向上を図る。自己資本を3年間積み増さず、資本効率性も考慮に入れながら、積極的な株主還元(前半3期は配当性向100%)にも取り組む。
・株主価値/企業価値の向上
資本コストを上回るリターンの確保とともに、東証プライム市場(流通株式時価総額100億円以上)の上場条件を満たす。
2. 中期経営計画(数値目標)の見直し
同社は、中期経営計画の前半3年間(2022年3月期~2024年3月期)で、事業ポートフォリオの最適化や新規事業分野への資源配分、株主価値向上のための施策を進めてきた。2024年3月期には、コロナ禍の影響から回復し、収益改善が見られるようになったが、ウクライナ情勢や中国経済の低迷、成長投資の遅れなどにより、当初の目標との差が生じてきている。そのため、2026年3月期の数値目標を再設定し、連結経常利益は当初目標の25億円から19億円に、ROEは当初目標の8.0%から5.4%と修正した。
なお、数値目標の一つである「M&Aなど投資枠」(計画期間5年間で総額50億円)の設定はそのまま継続し、引き続き成長投資に取り組む。
中期経営計画の最大の目玉は、新規ビジネスの開発と育成
3. 中期経営計画3期目の進捗状況
(1) サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資実行
1) 営業組織の統合
同社は2022年4月1日付で営業組織を統合した。基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門の5つの営業部を統合して、「産業インフラソリューショングループ」へ、産業素材関連部門の3つの営業部を統合して「マテリアルソリューングループ」へと、2つの営業グループに統合した。
営業組織の統合を行った狙いは3つある。第1に、事業特性や営業特性に適した事業戦略とその実行組織の再編である。2つの営業グループ(産業インフラソリューション、マテリアルソリューション)は、設備エンジニアリング系ビジネスと素材サプライヤー系ビジネスと定義され、売り方やビジネスのやり方が異なる。今後は、それぞれの営業組織で事業戦略と営業戦略を策定し実行する。第2に、将来的に顧客のニーズに応じてプロジェクトチームで動けるよう柔軟な営業体制を組めるようにする。第3に、顧客情報や専門的知見、ノウハウを組織で共有することで営業人材の育成強化につなげる。今回の営業組織改革は合理化や人員削減などの守りの組織改革ではなく、戦略的意味を持った攻めの組織改革であることを付け加えておく。
2) 事業ポートフォリオの再編と強化
同社では、営業組織改革を機に、事業セグメントの再編も同時に行った。2023年3月期より、「基幹産業関連部門」と「電子・制御システム関連部門」を統合して「産業設備関連部門」を新設し、従来の「産業素材関連部門」「機械部品関連部門」で3事業セグメント体制とした。
その背景には、カーボンニュートラル(脱炭素)の潮流を見据え、同社の火力発電所関連の事業から撤退すると決断したこと、電子・制御システム関連部門において主力事業であった「計装システム(火力発電所向け制御装置)」から撤退したことで事業規模が圧倒的に小さくなり、単独で事業セグメントを組む必要がなくなったことがある。そのため実質的には基幹産業関連部門に電子・制御システム関連部門を吸収した形となった。
2022年3月期からの会計基準変更により、売上高・売上総利益のトップは基幹産業関連部門セグメントから機械部品関連部門セグメントへ交代となった。中長期的に事業部門ごとに事業ポートフォリオの見直しを図り、リソースを再配置する方針としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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