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Chordia Research Memo(3):RNA制御ストレスを標的とした抗がん薬の開発を進める

*13:03JST Chordia Research Memo(3):RNA制御ストレスを標的とした抗がん薬の開発を進める
■Chordia Therapeutics<190A>の会社概要

2. 事業概要
(1) 経営方針
同社は、「日本発」「世界初」の新しい抗がん薬を開発し、一日でも早く患者のもとに届けることで、『Tomorrow is Another Day~明日に希望を感じる社会』の実現を目指している。ファーストインクラスの抗がん薬を創ることをミッションに掲げ、その実現を通じて2030年には日本発の研究開発型の製薬会社に成長していくことをビジョンとしている。

(2) ビジネスモデル
同社の特徴は、アカデミアとの連携によるシーズ探索能力と、製薬会社で培った創薬力によって上市させる研究開発能力を持つことにある。アカデミアとの共同研究に関しては、(国研)日本医療研究開発機構(AMED)からの助成金も活用しながら効率的に進めているほか、新薬開発において重要となるバイオマーカーを発見するために、富士通のAI技術なども活用しながら開発効率の向上に取り組んでいる。

医薬品の開発プロセスは基礎研究から始まり、探索研究、前臨床研究を経て、臨床試験によりヒトでの安全性・有効性を確認したのちに、製造販売承認を行い上市に至る。このうち同社は探索研究から臨床研究のなかでも第2相(少数のヒトに対しての効果検証)までをコアビジネスとして行うことを基本方針としている。また、国内では製造・販売まで自社で行い、海外市場はライセンスアウトを活用する。ライセンスアウトのタイミングは、パイプラインの価値、費用、競合状況を鑑み、基本形としては価値が向上する第2相臨床試験前後で検討することになる。

創薬のターゲットは医療ニーズの高いがん領域で、ファーストインクラス※の低分子化合物の創薬に取り組んでいる。新しい作用機序のため、安全性や有効性の予測が難しい反面、既存治療薬で効果の出なかった患者に対して大きな薬効が得られる可能性もある。薬価算定の際にその有効性や新規性に応じて高い価格に設定されることが多いため、グローバル製薬企業からの関心度も高く、大型ライセンス契約につながりやすい。同社ではこうした創薬研究を多くのアカデミアと共同で行っており、資金面ではAMEDからの助成金も活用しながら効率的に進めていることが特徴である。

※ 新しくユニークな作用機序により、既存治療薬と異なる有用性を示す革新的医薬品のこと。

(3) RNA制御ストレスを標的とした抗がん薬
抗がん薬の標的となる分子を見つけ出すには、がん細胞のホールマーク(特徴)を見出し、正常細胞との違いを明らかにすることが重要とされている。近年の研究によってがん細胞には13のホールマークがあることが明らかとなっており、このうち免疫ストレスやDNA損傷ストレスなど10のホールマークを標的とした抗がん薬については、小野薬品工業のオプジーボなど多くのブロックバスターが創出されている。こうしたなか、同社はまだ上市品が存在しないRNA制御ストレスを標的とした抗がん薬の開発を進めている。


がん細胞はRNAを生成する複数の過程が乱れ、正常細胞に比べて過剰にストレスが掛かっている状態にある。こうした状態に対して、さらにストレスを加える抗がん薬を投与することで、がん細胞を死滅させる。ストレスがかかっていない正常細胞も抗がん薬投与によってある程度のストレスがかかり、若干の副作用が生じるものの※、時間経過とともにストレス状態から解消され正常な状態に戻ることが研究で明らかとなっている。

※ CTX-712の第1相臨床試験では、悪心や嘔吐などの副作用が確認されたが、制吐剤を投与することでコントロールが可能なレベルであり、安全性に問題ないことが確認されている。

ヒトのタンパク質が生成される過程を簡単に見ると、DNAから遺伝子情報を転写することで前駆型mRNAを生成し、次にタンパク質を作るために必要なスプライシング過程※1を経て成熟型mRNAとなり、さらにトランスファーRNAをタンパク質合成の場に輸送することでタンパク質が生成される。同社はこの転写、スプライシング、輸送など各過程で働きを担う各種キナーゼ※2を阻害する抗がん薬の開発を進めている。

※1 前駆体mRNAからタンパク質合成に不必要な部分(イントロン)を取り除く工程。
※2 キナーゼとは、細胞の増殖や機能を調節する役割を担う酵素の総称。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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