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Eギャランティ Research Memo(3):「保証債務×保証料率」で収益を積み上げるストック型ビジネスモデル
2024/10/02 12:03
*12:03JST Eギャランティ Research Memo(3):「保証債務×保証料率」で収益を積み上げるストック型ビジネスモデル
■イー・ギャランティ<8771>の会社概要
2. 事業概要
(1) 事業内容
同社は企業間取引の際に発生する売上債権等の信用リスクを保証するサービスを主に手掛けている。以下に事業の流れを説明する。
同社は企業間取引で発生した売上債権等に関する未回収リスクを「保証」という形で事業会社または金融機関などから受託契約し、債務不履行が発生した場合に契約時に定められた保証額を限度に契約企業に支払う。契約企業にとっては、売上債権等の未回収リスクを一定の保証料を支払うことで最小限に抑えることができる。契約期間は大半が1年契約で、保証料は原則として保証開始日の前営業日に一括徴収し、これを月分割して売上計上する。このため、月ごとの売上変動は比較的小さく、また契約のリピート率も高いためストック型のビジネスモデルと言える。
売上高は「保証債務×保証料率」で決まることから、保証債務をいかに積み上げるかが売上成長のカギを握る。保証料率に関しては日々発表される経済指標や企業倒産件数の動向、過去の経験則に基づいた未回収リスクの発生確率など様々なデータを分析して、毎月見直しを行う。企業の倒産件数が増加傾向にあるときは信用リスクが増大するため、保証料率は上昇する。また、実際の保証料率に関しては個々の契約内容や保証対象企業ごとにリスク審査を行ったうえで決定する。業界内で規則がないため自由に設定できるが、リスクヘッジに見合った保証料率を設定する。また、引き受けた信用リスクに関してはリスク度合いに応じて細分化し、金融機関やファンド等の金融リスク商品としてポートフォリオを再組成して移転(流動化)している。信用リスクの移転に伴って発生する支払保証料や支払手数料等が売上原価の大半を占めることになる。
このため、同社が顧客と契約する保証料率と同社がリスク移転先に支払う保証料率のギャップが売上原価率の変動要因となる。同社ではリスク移転手法の多様化、高度化を進めることで支払保証料率の低減を進めているほか、子会社でファンドを組成することでリスク受託力の強化を図り、支払保証料等の社外流出を抑え低コスト化を実現している。ここ2~3年の売上原価率の推移を見ると、2021年3月期は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)で信用リスクが高まるなか、保証料率の引き上げを実施したが、それ以上に支払保証料率が上昇したため、売上原価率は前期比4.9ポイント上昇した。また、2023年3月期は企業倒産件数が3年ぶりの増加に転じたことで信用リスクが上昇したが、戦略的にリスクの低い大口の保証契約の獲得に注力したことで平均保証料率は低下し、またそれ以上に支払保証料率を低減できたことで、売上原価率は同1.1ポイント低下した。10年スパンで見ると原価率は20%前後の水準で推移している。なお、ファンドは1本当たり200~1,000億円規模で信用リスクを引き受けており、金融機関等から資金を調達している。同ファンドに対する需要は旺盛で、有利な条件で資金を調達できているようだ。一方、販管費率については事業規模の拡大やDX推進による間接部門のコスト抑制が進んだこともあり、ここ数年は低減傾向が続いており営業利益率の上昇要因となっている。
(2) 営業体制
同社は、営業拠点を東京本社のほか北海道支店(札幌)、東北支店(仙台)、名古屋支店、北陸支店(金沢)、大阪支店、広島支店、中四国支店(高松)、九州支店(福岡)と合計9ヶ所に開設している。顧客開拓に関しては、地方銀行を中心とした金融機関や商社、リース会社などと業務提携を結び、提携先から顧客紹介を受けることで効率的に獲得している。とりわけ、地方銀行については2024年8月末時点で53行と業務提携を結ぶなど、ほぼ全国にネットワークを確立しており、全体の紹介案件の約8割を占める重要な顧客開拓ルートとなっている。また、都市部では中小企業の顧客開拓を進めるべく、2016年3月期から信用金庫との提携も推進しており、2024年8月末時点で15行の信用金庫・信用組合と提携している。そのほかにも証券会社4社、事業会社21社(リース会社、保険代理店等)、その他銀行2行と提携している。これら提携先では都市部での顧客紹介が多い。
顧客数は中小から大企業まで合計5,000社を超え、業種も卸売業、小売業、製造業など多岐にわたる。このため、特定業種の景気変動に影響を受けにくい収益構造だ。同社はこれら顧客からサービスの審査対象となる企業の情報を収集し、データベース化している。審査企業は毎月3万社を超え、企業間取引に関する情報だけでなく周辺情報なども含め1日当たり260万項目以上のデータを収集し、データベース化している。データベースには経営者の属性から口コミサイトの評価状況に至るまで様々な動的情報も含まれており、これらデータを用いてリスク度合いを分析し、最終的には審査担当者の経験等も加味したうえで、個社ごとに最適な保証料率を設定する。一般的に金融機関等が企業のリスク度合いを審査する場合、過去の決算数値や資産状況だけを見て判断するケースが多いが、中小企業の場合、経営状況の変化するスピードが速く、リアルタイムの情報を加味して分析することが倒産リスクの精度を高める肝になると同社では認識している。ここまでの幅広いデータ収集と徹底した分析を行う企業はほかにはなく、同社の強みとなっており、高い収益性を維持し続ける要因になっている。
また、同社のサービスを利用する企業のリピート率は90%以上で安定して推移している。一度、同社のサービスを利用した企業は、そのメリットを認識することでほぼ継続して利用していることになる。企業は取引先の信用状況をチェックするための審査業務を行っているが、取引額が小さい企業まですべて自社で審査を行うのは費用対効果という面で効率が悪く、こうした取引先については同社の信用保証サービスを利用することでリスクヘッジを行うケースが多い。なお、保証債務を地域別で見ると都道府県別のGDP比率とほぼ同様の傾向にある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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■イー・ギャランティ<8771>の会社概要
2. 事業概要
(1) 事業内容
同社は企業間取引の際に発生する売上債権等の信用リスクを保証するサービスを主に手掛けている。以下に事業の流れを説明する。
同社は企業間取引で発生した売上債権等に関する未回収リスクを「保証」という形で事業会社または金融機関などから受託契約し、債務不履行が発生した場合に契約時に定められた保証額を限度に契約企業に支払う。契約企業にとっては、売上債権等の未回収リスクを一定の保証料を支払うことで最小限に抑えることができる。契約期間は大半が1年契約で、保証料は原則として保証開始日の前営業日に一括徴収し、これを月分割して売上計上する。このため、月ごとの売上変動は比較的小さく、また契約のリピート率も高いためストック型のビジネスモデルと言える。
売上高は「保証債務×保証料率」で決まることから、保証債務をいかに積み上げるかが売上成長のカギを握る。保証料率に関しては日々発表される経済指標や企業倒産件数の動向、過去の経験則に基づいた未回収リスクの発生確率など様々なデータを分析して、毎月見直しを行う。企業の倒産件数が増加傾向にあるときは信用リスクが増大するため、保証料率は上昇する。また、実際の保証料率に関しては個々の契約内容や保証対象企業ごとにリスク審査を行ったうえで決定する。業界内で規則がないため自由に設定できるが、リスクヘッジに見合った保証料率を設定する。また、引き受けた信用リスクに関してはリスク度合いに応じて細分化し、金融機関やファンド等の金融リスク商品としてポートフォリオを再組成して移転(流動化)している。信用リスクの移転に伴って発生する支払保証料や支払手数料等が売上原価の大半を占めることになる。
このため、同社が顧客と契約する保証料率と同社がリスク移転先に支払う保証料率のギャップが売上原価率の変動要因となる。同社ではリスク移転手法の多様化、高度化を進めることで支払保証料率の低減を進めているほか、子会社でファンドを組成することでリスク受託力の強化を図り、支払保証料等の社外流出を抑え低コスト化を実現している。ここ2~3年の売上原価率の推移を見ると、2021年3月期は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)で信用リスクが高まるなか、保証料率の引き上げを実施したが、それ以上に支払保証料率が上昇したため、売上原価率は前期比4.9ポイント上昇した。また、2023年3月期は企業倒産件数が3年ぶりの増加に転じたことで信用リスクが上昇したが、戦略的にリスクの低い大口の保証契約の獲得に注力したことで平均保証料率は低下し、またそれ以上に支払保証料率を低減できたことで、売上原価率は同1.1ポイント低下した。10年スパンで見ると原価率は20%前後の水準で推移している。なお、ファンドは1本当たり200~1,000億円規模で信用リスクを引き受けており、金融機関等から資金を調達している。同ファンドに対する需要は旺盛で、有利な条件で資金を調達できているようだ。一方、販管費率については事業規模の拡大やDX推進による間接部門のコスト抑制が進んだこともあり、ここ数年は低減傾向が続いており営業利益率の上昇要因となっている。
(2) 営業体制
同社は、営業拠点を東京本社のほか北海道支店(札幌)、東北支店(仙台)、名古屋支店、北陸支店(金沢)、大阪支店、広島支店、中四国支店(高松)、九州支店(福岡)と合計9ヶ所に開設している。顧客開拓に関しては、地方銀行を中心とした金融機関や商社、リース会社などと業務提携を結び、提携先から顧客紹介を受けることで効率的に獲得している。とりわけ、地方銀行については2024年8月末時点で53行と業務提携を結ぶなど、ほぼ全国にネットワークを確立しており、全体の紹介案件の約8割を占める重要な顧客開拓ルートとなっている。また、都市部では中小企業の顧客開拓を進めるべく、2016年3月期から信用金庫との提携も推進しており、2024年8月末時点で15行の信用金庫・信用組合と提携している。そのほかにも証券会社4社、事業会社21社(リース会社、保険代理店等)、その他銀行2行と提携している。これら提携先では都市部での顧客紹介が多い。
顧客数は中小から大企業まで合計5,000社を超え、業種も卸売業、小売業、製造業など多岐にわたる。このため、特定業種の景気変動に影響を受けにくい収益構造だ。同社はこれら顧客からサービスの審査対象となる企業の情報を収集し、データベース化している。審査企業は毎月3万社を超え、企業間取引に関する情報だけでなく周辺情報なども含め1日当たり260万項目以上のデータを収集し、データベース化している。データベースには経営者の属性から口コミサイトの評価状況に至るまで様々な動的情報も含まれており、これらデータを用いてリスク度合いを分析し、最終的には審査担当者の経験等も加味したうえで、個社ごとに最適な保証料率を設定する。一般的に金融機関等が企業のリスク度合いを審査する場合、過去の決算数値や資産状況だけを見て判断するケースが多いが、中小企業の場合、経営状況の変化するスピードが速く、リアルタイムの情報を加味して分析することが倒産リスクの精度を高める肝になると同社では認識している。ここまでの幅広いデータ収集と徹底した分析を行う企業はほかにはなく、同社の強みとなっており、高い収益性を維持し続ける要因になっている。
また、同社のサービスを利用する企業のリピート率は90%以上で安定して推移している。一度、同社のサービスを利用した企業は、そのメリットを認識することでほぼ継続して利用していることになる。企業は取引先の信用状況をチェックするための審査業務を行っているが、取引額が小さい企業まですべて自社で審査を行うのは費用対効果という面で効率が悪く、こうした取引先については同社の信用保証サービスを利用することでリスクヘッジを行うケースが多い。なお、保証債務を地域別で見ると都道府県別のGDP比率とほぼ同様の傾向にある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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