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ケアネット Research Memo(7):医師の囲い込みが同社の根源的な強み

*11:07JST ケアネット Research Memo(7):医師の囲い込みが同社の根源的な強み
■ケアネット<2150>の今後の見通し

2. 競争優位性
同社の競合企業には、エムスリーとメドピアが該当する。エムスリーは、医師会員向けプラットフォーム「m3.com」を運営し、製薬マーケティング支援や医療データ利活用を行っている。国内医師の9割超に当たる33万人以上の会員数を持ち、製薬マーケティング支援分野では第1位のシェアを有している。メドピアは、医師専用コミュニティサイト「MedPeer」を運営し、医師同士の情報共有や製薬マーケティング支援を行っている。全国17万人の医師会員数による医師同士のコミュニティ形成に強みがあり、薬剤評価掲示板や症例相談などのコンテンツが充実していることが特徴である。

同社の優位性としては、国内医師の約6割に当たる23万人以上の会員を有していること、医師向けの医学教育コンテンツサービスとしてブランド力を確立していること、同社が有する医師との信頼関係を軸にインターネットと人を融合したハイブリッド型の情報提供モデルを展開していることなどが挙げられる。

医薬DX事業の競争環境としては、今後もエムスリーやメドピアなどが競合となることが予測されるが、医療系広告事業の寡占的な競争環境とは異なる。急激なMRの減少により、製薬業界が求めるものは広告から営業ソリューションにシフトしている。営業ソリューションは広告と異なり住み分けが必然となるため、スピーディーで効率的なソリューションの提供により十分なシェアの獲得が期待できる。また、新たな事業環境では従前のスケールや、AI・データマネジメントのようなテクニカル面は競争優位性の核とはなり得ず、医師の囲い込みが根源的な強みになると同社は見ている。そのため、スピーディーかつ効率的な営業ソリューション、大学病院の教授クラスから専門医のトップクラスが魅力を感じる付加価値の提供に注力することが最重要課題と考えている。

競合企業を含めた3社の直近決算期における業績と主な経営指標、今後の施策は以下のとおりである。

エムスリーの2024年3月期(2023年4月~2024年3月)の業績は、売上高238,833百万円(前期比3.5%増)、営業利益64,381百万円(同10.6%減)となった。売上高は、医療現場の人材支援を手掛けるキャリアソリューション事業が伸びた一方で、収益性の高い製薬企業向けマーケティング支援が軟調した。営業利益は、北米での新型コロナウイルス関連の治験(臨床試験)プロジェクトが不芳となり、のれんなどの減損損失を計上した。トピックスとしては、福利厚生代行の(株)ベネフィット・ワンに対しTOBを実施したが、第一生命ホールディングス<8750>がより有利な条件で対抗TOBを実施したため不成立となった。2025年3月期は、売上高268,000~273,000百万円(同12.2%~14.3%増)、営業利益67,000~70,000百万円(同4.1%~8.7%増)を見込んでいる。製薬マーケティング支援の再成長に向けて、顧客企業の生産性を向上させる新サービスの開発や、自社で保有するデータを活用したコンサル型の提案を強化するとしている。主な経営指標のうち、総資産回転率は0.5回と2016年3月期の1.0回の約半分にまで低下した。同社(2023年12月期は0.8回)やメドピア(2023年9月期は1.2回)を下回る水準であり、成長の鈍化が浮かび上がった。相次ぐM&Aによるのれんや現金及び現金同等物を含む総資産の拡大ペースに対して、売上高の増加ペースが追い付いていないものと思われる。

メドピアの2023年9月期(2022年10月~2023年9月)の業績は、売上高14,540百万円(前期比72.0%増)、営業利益1,119百万円(同5.3%増)となった。売上高は、M&Aにより取得したMIフォース(株)が寄与し、過去最高を更新した。営業利益は、利益率が高いWebサービスと利益率が低い人材派遣のサービスミックスの影響により、計画には達しなかった。2024年9月期は、売上高14,600百万円(同0.4%増)、営業利益1,150百万円(同2.7%増)を見込んでいる。「医師に一番近いプラットフォーム」という強みに立脚し、信頼できるパートナーとしての地位確立を目指す。また、選択と集中による事業ポートフォリオの再構築を行い、投資を加速させる事業を明確にし、場合によっては事業撤退も検討する方針である。主な経営指標のうち、売上高純利益率は前期比5.4ポイント減であり、M&Aによりトップラインを大きく伸ばした一方で、事業ポートフォリオの変動により収益性の悪化が見られた。

同社の2023年12月期(2023年1月~2023年12月)の業績は、売上高10,235百万円(前期比9.7%増)、営業利益2,428百万円(同14.8%減)であった。主力事業を展開するeプロモーション市場が軟調に推移し計画未達となるも、医薬DX事業とメディカルプラットフォーム事業の双方において売上高が前期を上回る成長を見せた。営業利益は、既存サービスの販売体制強化及び販管費削減や効率化等の施策を推進したが、新規事業開発投資や人材補強による販管費の増加により減少した。2024年12月期は、売上高11,600百万円(同13.3%増)、営業利益2,200円(同9.4%減)を見込んでいる。プラットフォームの改善、良質なコンテンツ制作等の施策を推進し、既存事業のオーガニックな成長を継続する方針である。主な経営指標のうち、ROEは14.2%とエムスリー(2024年3月期は13.8%)やメドピア(2023年9月期は7.8%)を上回る水準であり、同社事業の収益性の高さが伺える。

3社を比較すると、eプロモーション市場の成長鈍化が共通して挙げられる。コロナ禍を契機に対面を好む「会える医師」とオンラインを好む「会えない医師」の二極化が進み、さらに医師の働き方改革に伴い製薬企業は医師の勤務時間内に情報提供を行うことが難しくなった。そのため、製薬企業はオンラインでの情報提供や医師が必要な時にアクセスできるPull型の情報提供を強化する必要がある。3社にとっては、デジタルと対面のハイブリッド型の営業に対応したソリューションの提供が求められる状況である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)




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