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平和不動産リート投資法人 Research Memo(5):サステナブルな投資主還元を目指す(1)

*15:45JST 平和不動産リート投資法人 Research Memo(5):サステナブルな投資主還元を目指す(1)
■中長期の成長戦略

1.中期目標「NEXT VISION II」
平和不動産リート投資法人<8966>では、2024年5月期からは「サステナブルな投資主価値の向上を追求するステージ」と位置付けて、新たな中期目標として「NEXT VISION II」を掲げ、(1)分配金3,800円、(2)資産規模3,000億円、(3)内部成長として賃料収入年率+1%とROI10%、(4)格付AA、(5)GHG90%削減と再生可能エネルギー電力100%の数値目標を目指している。

「NEXT VISION II」では、数値目標の達成を目指す過程で、潤沢な内部留保残高と含み益の活用などの「攻め」の資金活用によって、バリューアップ工事や物件入替によるポートフォリオのブラッシュアップ戦略を推進するという内部成長により、サステナブルな投資主価値の向上を追求する点に最大の特徴がある。バリューアップ工事の短期回収型では、ROI10%を目指してオフィス専有部のセットアップオフィス、レジデンス専有部での室内や水回り部分のアップグレードなどを行う。実際、2023年11月期及び2024年5月期には、セットアップオフィス2件、レジデンス専有部のバリューアップ工事7件を実施した。2024年5月期に実施した工事のうち、2024年7月17日までに成約した7物件の平均賃料引き上げ率は25.3%、平均ROIは12.2%と、「NEXT VISION II」に掲げる目標を上回っている。バリューアップ工事は、主に、レジデンスでは面積が35平方メートル以上のDINKs・ファミリー向けの物件を、オフィスでは50坪以下の需要が大きい物件を選定して実施している。その他の数値目標では、AAへの格上げによって、投資家層の拡大とファイナンスコストの抑制を図る。さらに、GHG削減など、環境問題へも十分に配慮している。なお、分配金向上については、外部成長で+93円/口、内部成長で+378円+α/口、財務運営で-99円/口を見込み、特に内部成長の戦略的な「攻め」の資金活用によって+αの上乗せを計画している。さらに、潤沢な内部留保で5,004円/口、含み益で50,927円/口の支払余地があることが同REITの大きな強みである。5つの数値目標は、いずれも順調に推移していると判断される。

2. 外部成長戦略
外部成長戦略では、「着実かつ健全な外部成長」「継続的な入替戦略の実施」「投資機会の拡大・中長期で競争力を有するポートフォリオの構築」を運用方針としている。「着実かつ健全な外部成長」としては、ポートフォリオの質と収益性の向上に資する物件に厳選投資し、スポンサーと協働することで開発など多様な手法による取得機会の拡大を図ることに加え、フリーキャッシュ及び借入余力を活用した機動的な物件取得を行う。「継続的な入替戦略の実施」としては、低収益物件や小規模レジデンスを優良なオフィスやレジデンスに入れ替えるなど、引き続きポートフォリオの収益力改善を図る。「投資機会の拡大・中長期で競争力を有するポートフォリオの構築」としては、基本的にはオフィスとレジデンスに投資するが、マーケット需要の変化・社会的ニーズへの対応として、新たに全体の10%を上限にホテルなど、中長期的に安定収益を見込める物件への投資機会を拡大する方針だ。

同REITのスポンサーである平和不動産はオフィス及びレジデンス開発を積極的に展開しており、同REITはその中から物件を取得している。2024年11月期の期初に実施した4年連続となる公募増資により、平和不動産のパイプラインから販売用不動産のうちオフィス2物件を取得した。このように平和不動産の販売用不動産のストックは、将来の同REITの外部成長を支えている。加えて、同REITでは、普通借地権を活用したパイプラインの構築に取り組んでいる。スポンサーである平和不動産との協業により、借地権のデメリットを克服し、メリットを最大限に享受できるスキームを構築できるのが強みである。また、共有物件・区分所有物件の追加取得によって、ポートフォリオ価値の向上にも取り組んでいる。2024年6月には、北浜一丁目平和ビル(大阪市中央区)のスポンサーからの追加取得による完全保有化(所有割合100%)によって鑑定評価額が1.6億円増加した。今後も公募増資による資産規模の増加、DPUやNAV(純資産価値)の成長、LTVの引き下げを推進し、レバレッジを活用した成長余力の確保を目指している。

3. 内部成長戦略
内部成長戦略では、「高稼働率の維持・向上」「賃料増額に向けた取り組み」「付帯収入増加と費用削減」「戦略的な「攻め」の資金活用」を運用方針としている。「高稼働率の維持・向上」としては、スポンサーやPM(プロパティ・マネジメント)会社と連携し適切かつタイムリーなリーシング施策の実施によるテナント需要の取り込み、良質な運営・管理、CS(顧客満足度)対応施策によるテナント退去の防止、ダウンタイム(空室期間)の短縮などを目指す。「賃料増額に向けた取り組み」としては、テナント入替時及び契約更改時における賃料増額や是正を推進する。「戦略的な「攻め」の資金活用」としては、潤沢なフリーキャッシュ及び内部留保の活用によるポートフォリオのブラッシュアップ戦略によって内部成長スピードを加速、バリューアップ工事により需要を喚起してインフレの影響を賃料に転嫁しやすい環境を醸成、先行投資により将来キャッシュ・フローの創出、獲得したキャッシュ・フローをポートフォリオのブラッシュアップへ循環投資、内部成長によるROAの向上を通じたEPUの持続的成長などを目指す。特に「戦略的な「攻め」の資金活用」は、「NEXT VISION II」の数値目標達成のための重要な戦略との位置付けであり、この戦略の推進によって分配金向上への+αの効果を生み出す計画だ。

オフィスの期中平均稼働率は、市場平均を大きく上回る98%台後半で安定的に推移しており、2024年5月期には98.6%(前期比0.14ポイント上昇)と引き続き高水準を維持した。2024年11月期は解約面積が増加する見通しだが、高稼働率を前提にバリューアップ工事実施の効果も含めた賃料ギャップの回収を進める機会と捉えている。また、2024年5月期は3期連続での賃料増額改定をし、期当たり約14百万円の賃料増額で着地した。2024年11月期以降は既に約37百万円の賃料収入増加が見込まれ、大幅な拡大基調にある。テナントとの対面による賃料協議により、更新賃料改定は着実に進展している。また、市場賃料の低下が限定的であることに加え、賃料ギャップ(市場賃料との乖離)を抱える物件の取得により、ポートフォリオの賃料ギャップが拡大しており、早期の賃料増額改定を実現する基礎となっている。コロナ禍で一時停滞していたテナントの動きは徐々に活発化してきており、特に同REITの主要顧客は中小事業者が中心であるため、テレワーク促進などによる退去の動きは見られない。

レジデンスにおいても、2024年5月期は3月末を含む繁忙期であり期中平均稼働率は97.3%と、4期連続して97%超の稼働率を記録し、高稼働率トレンドを維持した。また、投資エリア別には、保有物件が集中する東京圏を中心に、リーシングは好調に推移している。コロナ禍が終わり、再び都市部に人が流入している。オフィスではテナントが原状回復後に引き渡すため期中平均稼働率が高いが、レジデンスでは退去後にオーナーが工事をするため、現在の期中平均稼働率は上限に近い水準だ。2024年5月期には入替賃料・更新賃料いずれも増額で改定し、約19百万円の賃料収入増加となった。また、礼金取得率は50%を超え、取得額とともに高い水準を維持している。更新率についても上昇傾向にあり、80%を超える水準でポートフォリオの安定化に寄与している。一方、市場の賃料上昇に伴い賃料ギャップが拡大していることから、これを解消して将来の賃料上昇につなげる計画だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)




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