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品川リフラ Research Memo(11):長期ビジョン「ビジョン2030」及び第6次中期経営計画を発表(3)
2024/07/08 14:11
*14:11JST 品川リフラ Research Memo(11):長期ビジョン「ビジョン2030」及び第6次中期経営計画を発表(3)
■品川リフラクトリーズ<5351>の中長期の成長戦略
c) 先端機材セクター(旧セラミックスセクター)
「金属代替品としての構造材料から、先端産業における機能性材料への軸足移行」「技術開発力と生産能力の拡充」「M&AやJVによる事業拡大」をセクタービジョンとする。ファインセラミックスや無機塗料・無機接着剤など「高付加価値」に属する製品を取り扱っている。主力製品であるファインセラミックスは、金属や樹脂などの素材と比べて耐熱性・耐食性や機械的強度などで優れ、半導体・自動車・産業用機械など幅広い分野で使用されており、軽量素材などとしても今後需要がさらに伸びることが期待される。生産能力の増強、競争力強化や事業規模の拡大が重要な課題となる。米国で高性能ポンプの需要が増加しており、セラミック部材の増産対応中である。無機塗料・無機接着剤は、主力の事業である耐火物研究の成果を応用しており、有機物を含む通常の塗料・接着剤では実現できない耐熱性・電気絶縁性・耐候性や離型性が特長である。足元では加工工程の移設、自動加工機導入、設備更新など設備投資を積極的に進め生産能力を拡大している。
また、新しい成長分野として、半導体製造装置向け部材、航空機向け関連製品や特殊蒸着材、リチウムイオン電池向けの耐摩耗部材・溶湯部材、鉄鋼向け窒化ケイ素ロール等の市場参入・拡販、製品ラインナップの拡充、外部技術の導入・組織強化による規模の拡大を図る。窒化ケイ素ロールは第6次中期経営計画期間中に開発の完了を予定するなど、第6次中期経営計画期間は2028年3月期以降の本格参入に向けた製品開発強化と生産基盤構築期と位置付けている。2024年3月には半導体製造装置の組み立てを主な事業とするコムイノベーションを買収したが、引き続きM&A、JVによる事業ポートフォリオの拡大を目指す。
2027年3月期の売上高は54億円(2024年3月期比54.3%増)、営業利益は4億円、EBITDAは8億円とそれぞれ2024年3月期の4倍、ROICは9.9%(同5.9ポイント上昇)を目標とし、各セクターの中で特に成長を期待している。
d) エンジニアリングセクター
「カーボンニュートラル案件の確実な受注」「成長が見込まれる工業炉分野(非鉄、半導体関連)への積極参入」「工事対応力の強化(新技術の開発、工事体制の見直し、M&Aの推進)」をセクタービジョンとする。エンジニアリングセクターは、近年の国内粗鋼生産の縮小やカーボンニュートラルの加速などにより経営環境が大きく変わろうとしている。既存分野への対応に加え、今後の成長分野を見据えた新事業創出への挑戦が重要な課題と同社は認識している。高炉メーカーが進める大型電気炉、カーボンリサイクル高炉等カーボンニュートラル案件については、取引先の検討段階から参画し、技術の蓄積と確実な受注につなげる戦略だ。カーボン焼成炉等工業炉分野については、成長分野として人材を投入し受注拡大を目指す。既存分野においても、新たな施工技術・点検技術の導入・開発により働き方改革と作業効率を推進する。そして、国内外での業務提携・M&Aを推進し、労働力を確保しながらシナジー効果を追求していく。
2027年3月期の売上高は249億円(2024年3月期比1.6%増)、営業利益は17億円、EBITDAは20億円とそれぞれ2024年3月期比横ばい、ROICは15.1%(同0.4ポイント上昇)を目標とする。
(2) 生産基盤の整備
東西の国内拠点を再編・統合し、国内拡販とグローバルマーケットにおける成長への生産基盤を整備する。西日本地区においては、不定形耐火物の競争力強化のため、生産拠点を集約(4拠点→2拠点)しており、不定形耐火物の生産集約拠点として、赤穂工場に建設した最新鋭プラントを2024年6月に稼働開始した。その結果、帝窯工場は閉鎖、日生工場はモールドパウダー専門工場となる。また、岡山工場のさらなる最適生産体制に向けた再構築を検討する。東日本地区においては、高炉各社の生産体制再編への対応として、湯本工場のプレキャストを除く不定形耐火物を鹿島工場と西日本地区の赤穂工場に集約した(2024年3月完了)。第6次中期経営計画期間では、海外ビジネスのマザー工場化も視野に入れ湯本工場の機能性耐火物の生産ラインを最新鋭化するなど、生産拠点の集約をスタートする。
(3) グローバル展開の加速
オーガニックな成長に加え、耐火物セクターを中心に新規M&A・JVによるグローバル展開を加速する。2022年12月にSRB(ブラジル)の耐火物事業、SSCA(米国)の耐摩耗性セラミックス事業を譲受したのに続いて、2024年4月にインドネシアに合弁でSRPを設立した。2014年よりSRI(インドネシア)を拠点に不定形耐火物を中心とした製品を提供してきたが、SRPの設立により不定形耐火物製品のラインナップの充実とサービスの向上を図る。2024年7月より事業を開始する予定で、今後アセアン地域で事業を拡大する計画だ。また、2008年より高品質のモールドパウダー製品を中国などアジア市場に提供してきた品川和豊において、付加価値の高い連続鋳造用機能性耐火物(ノズル)の事業化を決定し、2026年3月期末までに新工場稼働及び機能性耐火物(ノズル)の製造販売を開始する計画である。海外売上高は、第5次中期経営計画で急速に拡大したが、第6次中期経営計画期間は現地製造・現地販売の体制強化を推し進め、2027年3月期には海外売上高822億円、海外売上高比率45%を目指す。
(4) サステナビリティ経営の推進
同社においては、事業活動を通じた気候変動への取り組みを重要な成長戦略エレメントとして根付かせていく方針である。Scope1、2においては、LNGなどCO2排出量削減となる燃料への転換、太陽光発電の導入推進、不焼成製品の開発・販売強化による省エネルギーを促進している。Scope3の下流工程においては、低熱伝導製品の開発・販売強化のほか、耐火物技術、断熱材技術、築炉エンジニアリング技術の融合によるソリューション提供などにより、取引先の高温プロセスにおける熱ロス低減を推進する。使用後耐火物(従来はその多くを産業廃棄物として処理)の回収も強化し、取引先のカーボンニュートラルへの貢献を進める。さらに、Scope3の上流工程においては、2024年4月にリサイクル推進部を発足した。使用後耐火物の選別・加工技術の向上、Green Refractoryの開発・浸透などにより、サプライチェーンを通じたCO2排出量削減に貢献していく。
(5) 人的資本戦略
「人材獲得」「人材定着」「人材・組織開発」を軸とした経営基盤の確立を目指す。教育研修(階層別・専門研修等)の充実、グローバルなグループ間交流の積極推進、企業理念をベースにした組織開発の展開などグローバル企業として経営戦略に即した人材・組織を開発する。ダイバーシティ採用の推進、コンプライアンス教育やハラスメント防止対策の充実など、多様な人材が十分に活躍できる企業文化を醸成するためダイバーシティ&インクルージョンを推進する。そして、フレックスタイム・テレワーク勤務制度の活用推進、育児・介護休業の取得促進、年次有給休暇の取得促進などワークライフバランスや個人の生活環境に応じた多様な働き方を支援し、働きやすい職場を創造する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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■品川リフラクトリーズ<5351>の中長期の成長戦略
c) 先端機材セクター(旧セラミックスセクター)
「金属代替品としての構造材料から、先端産業における機能性材料への軸足移行」「技術開発力と生産能力の拡充」「M&AやJVによる事業拡大」をセクタービジョンとする。ファインセラミックスや無機塗料・無機接着剤など「高付加価値」に属する製品を取り扱っている。主力製品であるファインセラミックスは、金属や樹脂などの素材と比べて耐熱性・耐食性や機械的強度などで優れ、半導体・自動車・産業用機械など幅広い分野で使用されており、軽量素材などとしても今後需要がさらに伸びることが期待される。生産能力の増強、競争力強化や事業規模の拡大が重要な課題となる。米国で高性能ポンプの需要が増加しており、セラミック部材の増産対応中である。無機塗料・無機接着剤は、主力の事業である耐火物研究の成果を応用しており、有機物を含む通常の塗料・接着剤では実現できない耐熱性・電気絶縁性・耐候性や離型性が特長である。足元では加工工程の移設、自動加工機導入、設備更新など設備投資を積極的に進め生産能力を拡大している。
また、新しい成長分野として、半導体製造装置向け部材、航空機向け関連製品や特殊蒸着材、リチウムイオン電池向けの耐摩耗部材・溶湯部材、鉄鋼向け窒化ケイ素ロール等の市場参入・拡販、製品ラインナップの拡充、外部技術の導入・組織強化による規模の拡大を図る。窒化ケイ素ロールは第6次中期経営計画期間中に開発の完了を予定するなど、第6次中期経営計画期間は2028年3月期以降の本格参入に向けた製品開発強化と生産基盤構築期と位置付けている。2024年3月には半導体製造装置の組み立てを主な事業とするコムイノベーションを買収したが、引き続きM&A、JVによる事業ポートフォリオの拡大を目指す。
2027年3月期の売上高は54億円(2024年3月期比54.3%増)、営業利益は4億円、EBITDAは8億円とそれぞれ2024年3月期の4倍、ROICは9.9%(同5.9ポイント上昇)を目標とし、各セクターの中で特に成長を期待している。
d) エンジニアリングセクター
「カーボンニュートラル案件の確実な受注」「成長が見込まれる工業炉分野(非鉄、半導体関連)への積極参入」「工事対応力の強化(新技術の開発、工事体制の見直し、M&Aの推進)」をセクタービジョンとする。エンジニアリングセクターは、近年の国内粗鋼生産の縮小やカーボンニュートラルの加速などにより経営環境が大きく変わろうとしている。既存分野への対応に加え、今後の成長分野を見据えた新事業創出への挑戦が重要な課題と同社は認識している。高炉メーカーが進める大型電気炉、カーボンリサイクル高炉等カーボンニュートラル案件については、取引先の検討段階から参画し、技術の蓄積と確実な受注につなげる戦略だ。カーボン焼成炉等工業炉分野については、成長分野として人材を投入し受注拡大を目指す。既存分野においても、新たな施工技術・点検技術の導入・開発により働き方改革と作業効率を推進する。そして、国内外での業務提携・M&Aを推進し、労働力を確保しながらシナジー効果を追求していく。
2027年3月期の売上高は249億円(2024年3月期比1.6%増)、営業利益は17億円、EBITDAは20億円とそれぞれ2024年3月期比横ばい、ROICは15.1%(同0.4ポイント上昇)を目標とする。
(2) 生産基盤の整備
東西の国内拠点を再編・統合し、国内拡販とグローバルマーケットにおける成長への生産基盤を整備する。西日本地区においては、不定形耐火物の競争力強化のため、生産拠点を集約(4拠点→2拠点)しており、不定形耐火物の生産集約拠点として、赤穂工場に建設した最新鋭プラントを2024年6月に稼働開始した。その結果、帝窯工場は閉鎖、日生工場はモールドパウダー専門工場となる。また、岡山工場のさらなる最適生産体制に向けた再構築を検討する。東日本地区においては、高炉各社の生産体制再編への対応として、湯本工場のプレキャストを除く不定形耐火物を鹿島工場と西日本地区の赤穂工場に集約した(2024年3月完了)。第6次中期経営計画期間では、海外ビジネスのマザー工場化も視野に入れ湯本工場の機能性耐火物の生産ラインを最新鋭化するなど、生産拠点の集約をスタートする。
(3) グローバル展開の加速
オーガニックな成長に加え、耐火物セクターを中心に新規M&A・JVによるグローバル展開を加速する。2022年12月にSRB(ブラジル)の耐火物事業、SSCA(米国)の耐摩耗性セラミックス事業を譲受したのに続いて、2024年4月にインドネシアに合弁でSRPを設立した。2014年よりSRI(インドネシア)を拠点に不定形耐火物を中心とした製品を提供してきたが、SRPの設立により不定形耐火物製品のラインナップの充実とサービスの向上を図る。2024年7月より事業を開始する予定で、今後アセアン地域で事業を拡大する計画だ。また、2008年より高品質のモールドパウダー製品を中国などアジア市場に提供してきた品川和豊において、付加価値の高い連続鋳造用機能性耐火物(ノズル)の事業化を決定し、2026年3月期末までに新工場稼働及び機能性耐火物(ノズル)の製造販売を開始する計画である。海外売上高は、第5次中期経営計画で急速に拡大したが、第6次中期経営計画期間は現地製造・現地販売の体制強化を推し進め、2027年3月期には海外売上高822億円、海外売上高比率45%を目指す。
(4) サステナビリティ経営の推進
同社においては、事業活動を通じた気候変動への取り組みを重要な成長戦略エレメントとして根付かせていく方針である。Scope1、2においては、LNGなどCO2排出量削減となる燃料への転換、太陽光発電の導入推進、不焼成製品の開発・販売強化による省エネルギーを促進している。Scope3の下流工程においては、低熱伝導製品の開発・販売強化のほか、耐火物技術、断熱材技術、築炉エンジニアリング技術の融合によるソリューション提供などにより、取引先の高温プロセスにおける熱ロス低減を推進する。使用後耐火物(従来はその多くを産業廃棄物として処理)の回収も強化し、取引先のカーボンニュートラルへの貢献を進める。さらに、Scope3の上流工程においては、2024年4月にリサイクル推進部を発足した。使用後耐火物の選別・加工技術の向上、Green Refractoryの開発・浸透などにより、サプライチェーンを通じたCO2排出量削減に貢献していく。
(5) 人的資本戦略
「人材獲得」「人材定着」「人材・組織開発」を軸とした経営基盤の確立を目指す。教育研修(階層別・専門研修等)の充実、グローバルなグループ間交流の積極推進、企業理念をベースにした組織開発の展開などグローバル企業として経営戦略に即した人材・組織を開発する。ダイバーシティ採用の推進、コンプライアンス教育やハラスメント防止対策の充実など、多様な人材が十分に活躍できる企業文化を醸成するためダイバーシティ&インクルージョンを推進する。そして、フレックスタイム・テレワーク勤務制度の活用推進、育児・介護休業の取得促進、年次有給休暇の取得促進などワークライフバランスや個人の生活環境に応じた多様な働き方を支援し、働きやすい職場を創造する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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