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飯野海運 Research Memo(8):2025年3月期は減収減益予想だが保守的
2024/06/13 14:48
*14:48JST 飯野海運 Research Memo(8):2025年3月期は減収減益予想だが保守的
■今後の見通し
1. 2025年3月期連結業績予想の概要
飯野海運<9119>の2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比1.4%減の136,000百万円、営業利益が同19.2%減の15,400百万円、経常利益が同33.5%減の14,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同28.6%減の14,100百万円を見込んでいる。前提の平均為替レートは142.50円/米ドル(前期は143.82円/米ドル)、適合燃料油平均価格は650米ドル/MT(同620米ドル/MT)、ドライバルク船市況前提はPanamax型が17,000米ドル(同12,238米ドル)、Small Handy型が13,000米ドル(同9,352米ドル)。為替感応度(1円変動による経常利益への影響額、営業外の為替差損益除く)は通期164百万円としている。なお、2024年5月7日時点における船隊に占めるスポット比率は大型原油タンカーが0%、ケミカルタンカーが27%、大型ガス(LPG)船・アンモニア船が13%、大型ガス(LNG)船が0%、中小型ドライバルク船が36%、電力専用船・チップ専用船が0%となっている。大型原油タンカー、大型ガス(LNG)船、電力専用船・チップ専用船は中長期契約のみで構成されているため、市況の影響を受けない形となっている。
営業利益(前期比37億円減)の内訳は、大型原油タンカーが同3.9億円増、ケミカルタンカーが同15.0億円減、大型ガス船が同12.7億円減、ドライバルク船が同8.0億円減、小型ガス船が同1.1億円減、不動産が同2.3億円減、その他(各分野の為替影響を抜き出して集約)が同1.5億円減となっている。大型原油タンカーは前期に実施した船舶入渠の影響が一巡して稼働が増加するため増益を見込んでいる。ケミカルタンカーは市況が底堅く推移すると見込んでいるが、用船2隻の契約終了に伴い前期から稼働隻数の減少及び稼働日数の減少を見込み、減益予想。大型ガス船は新造船の稼働が寄与するが、VLGC市況の下落を見込んで減益予想。ドライバルク船は市況が底堅く推移すると見込んでいるが、コスト上昇による利ザヤ減少や入渠の影響などにより減益予想。小型ガス船は近海船の市況上昇を見込んでいるが、船員費等の増加により減益予想。不動産はオフィス稼働が高水準で推移するが、飯野ビルディングにおける同社オフィス増床に伴うテナント家賃収入の減少に加え、営繕費・管理費の増加などを見込んで減益予想。その他は前期比で為替の円高影響を想定している。なお親会社株主に帰属する当期純利益については、一部資産の売却による特別利益を織り込んでいる。
2025年3月期は減収減益予想であるが、全体として保守的な印象が強く、中期経営計画で掲げている安定収益源積み上げに向けた各種取り組みの成果が進展していることを勘案すれば、会社予想に上振れの可能性があると弊社は考えている。
2. 2025年3月期の市況見通し
外航海運業のケミカルタンカーの市況については、地域紛争や世界経済の停滞が懸念材料となるが、新造船流入とプロダクトタンカーのケミカルタンカー市場への流入が限定的であり、市況は引き続き底堅く推移する見込みである。パナマ運河の渇水による通峡制限や紅海周辺での緊張の高まりを背景に、迂回ルートによる長距離航海で輸送距離が伸びていることもプラス要因となる見込みだ。大型ガス(LPG)船の市況は、新造船竣工に伴う船腹量増加に加え、地政学リスクや景気停滞による船腹需給バランス悪化が懸念材料となっている。一方で、ケミカルタンカー同様、迂回ルートによる輸送距離の伸長により、船腹量増加の影響は一部相殺されると予想している。ドライバルク船の市況については2024年3月期末より回復基調にあり、新造船の流入が限定的であることや、荷動きも堅調であることから市況は底堅く推移する見込みである。不動産業の国内(東京都心)オフィス市況については、2025年にオフィスビルの大量供給が予定されており、本格的な市況上昇には時間を要するものの、主要ビジネスエリアやハイグレード物件に対するニーズは高く、引き続き堅調に推移すると見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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■今後の見通し
1. 2025年3月期連結業績予想の概要
飯野海運<9119>の2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比1.4%減の136,000百万円、営業利益が同19.2%減の15,400百万円、経常利益が同33.5%減の14,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同28.6%減の14,100百万円を見込んでいる。前提の平均為替レートは142.50円/米ドル(前期は143.82円/米ドル)、適合燃料油平均価格は650米ドル/MT(同620米ドル/MT)、ドライバルク船市況前提はPanamax型が17,000米ドル(同12,238米ドル)、Small Handy型が13,000米ドル(同9,352米ドル)。為替感応度(1円変動による経常利益への影響額、営業外の為替差損益除く)は通期164百万円としている。なお、2024年5月7日時点における船隊に占めるスポット比率は大型原油タンカーが0%、ケミカルタンカーが27%、大型ガス(LPG)船・アンモニア船が13%、大型ガス(LNG)船が0%、中小型ドライバルク船が36%、電力専用船・チップ専用船が0%となっている。大型原油タンカー、大型ガス(LNG)船、電力専用船・チップ専用船は中長期契約のみで構成されているため、市況の影響を受けない形となっている。
営業利益(前期比37億円減)の内訳は、大型原油タンカーが同3.9億円増、ケミカルタンカーが同15.0億円減、大型ガス船が同12.7億円減、ドライバルク船が同8.0億円減、小型ガス船が同1.1億円減、不動産が同2.3億円減、その他(各分野の為替影響を抜き出して集約)が同1.5億円減となっている。大型原油タンカーは前期に実施した船舶入渠の影響が一巡して稼働が増加するため増益を見込んでいる。ケミカルタンカーは市況が底堅く推移すると見込んでいるが、用船2隻の契約終了に伴い前期から稼働隻数の減少及び稼働日数の減少を見込み、減益予想。大型ガス船は新造船の稼働が寄与するが、VLGC市況の下落を見込んで減益予想。ドライバルク船は市況が底堅く推移すると見込んでいるが、コスト上昇による利ザヤ減少や入渠の影響などにより減益予想。小型ガス船は近海船の市況上昇を見込んでいるが、船員費等の増加により減益予想。不動産はオフィス稼働が高水準で推移するが、飯野ビルディングにおける同社オフィス増床に伴うテナント家賃収入の減少に加え、営繕費・管理費の増加などを見込んで減益予想。その他は前期比で為替の円高影響を想定している。なお親会社株主に帰属する当期純利益については、一部資産の売却による特別利益を織り込んでいる。
2025年3月期は減収減益予想であるが、全体として保守的な印象が強く、中期経営計画で掲げている安定収益源積み上げに向けた各種取り組みの成果が進展していることを勘案すれば、会社予想に上振れの可能性があると弊社は考えている。
2. 2025年3月期の市況見通し
外航海運業のケミカルタンカーの市況については、地域紛争や世界経済の停滞が懸念材料となるが、新造船流入とプロダクトタンカーのケミカルタンカー市場への流入が限定的であり、市況は引き続き底堅く推移する見込みである。パナマ運河の渇水による通峡制限や紅海周辺での緊張の高まりを背景に、迂回ルートによる長距離航海で輸送距離が伸びていることもプラス要因となる見込みだ。大型ガス(LPG)船の市況は、新造船竣工に伴う船腹量増加に加え、地政学リスクや景気停滞による船腹需給バランス悪化が懸念材料となっている。一方で、ケミカルタンカー同様、迂回ルートによる輸送距離の伸長により、船腹量増加の影響は一部相殺されると予想している。ドライバルク船の市況については2024年3月期末より回復基調にあり、新造船の流入が限定的であることや、荷動きも堅調であることから市況は底堅く推移する見込みである。不動産業の国内(東京都心)オフィス市況については、2025年にオフィスビルの大量供給が予定されており、本格的な市況上昇には時間を要するものの、主要ビジネスエリアやハイグレード物件に対するニーズは高く、引き続き堅調に推移すると見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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