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富士紡HD Research Memo(8):半導体不況で中計の前提条件が狂うも実現性の高いローリングプランを検討(1)

*13:28JST 富士紡HD Research Memo(8):半導体不況で中計の前提条件が狂うも実現性の高いローリングプランを検討(1)
■中期経営計画

富士紡ホールディングス<3104>は2006年以降、その時々の経営課題を解決するために、5次にわたり中期経営計画を策定・実行してきた。中期経営計画「変身06-10」以降、「突破」「邁進」「加速」から「増強」へとつながるなかで、経営の最重要テーマを「変身」として、事業ポートフォリオの再構築により企業体質を強化し、2022年3月期は親会社株主に帰属する当期純利益が44億円超と過去最高を更新した。2021年からスタートした中期経営計画「増強21-25」では、儲かるビジネスへの転換により収益性を向上させ、「稼ぐ力」の強化を図ることで、最終年度は営業利益100億円の達成を目指している。

1. 中期経営計画「増強21-25」の全体像
2021年4月にスタートして4年目を迎えた中期経営計画「増強21-25」の前半(2021〜2023年)は、高収益体質への転換の種まき時期と位置付けた。そして、2024年からの中期経営計画の後半(2024〜2025年)は2025年のあるべき姿の実現に向け、“非連続的成長”を達成すべく、盤石な準備を行うことが喫緊の課題である。最大のキーポイントは研磨材や化学工業品を扱う中核事業のさらなる拡大のための「設備投資」の適時適正な実行である。大型設備投資の場合、発注してから稼働まで2年のタイムラグがあり、早期の意思決定が重要となるので今後も注視したい。

半導体業界の足元はシリコンサイクルによる需給変動はあるものの、これは循環的要素であり構造的には高成長を持続するので、同社も先行的に設備投資を行っていく。事業を拡大するためには、設備投資やM&A、アライアンスといったハード面の増強は不可欠であるが、ソフト面とのバランスも重要であることから、優秀な“人財”を確保し、その能力を存分に発揮できる環境をいかに整えるかが喫緊の課題である。

2. 経営目標と計画数値
同社は、中期経営計画「増強21-25」の全体方針である“儲かるビジネス”への転換を図り、収益性を向上させる(“利益あっての社会貢献”)としており、経営目標は2026年3月期の営業利益100億円(営業利益率16.7%)の実現を目指している。これは、2021年3月期の営業利益52億円の約2倍とチャレンジングな目標であり、同計画期間内の“非連続の事業拡大”が求められる数値である。この目標実現のために、2026年3月期の売上高目標は、2021年3月期比1.6倍の売上高600億円を掲げている。前述のとおり、これらの売上高・利益目標実現のカギとなるのは「適時適正な設備投資の実行」もしくは自社生産力を補完できる外部資源の調達・連携(アライアンスやM&A)の成否である。

2023年3月期下期から2024年3月期上期にかけて直撃した半導体不況により、研磨材事業を中心に大幅な減益となり、同社の成長力にブレーキがかかった。中期経営計画の後半(2024~2025年)は、半導体需要が順調に回復したとしても、2025年度目標(売上高600億円、営業利益100億円)達成は厳しいかもしれない。同社では、目標到達時期の許容範囲を広めるとともに、研磨材や化学工業品事業への継続的成長投資は緩めることなく、実現性の高い“ローリングプラン”の検討を進めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)



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