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2025年は短期的に円急伸も【フィスコ・コラム】
2024/12/01 09:00
*09:00JST 2025年は短期的に円急伸も【フィスコ・コラム】
昨年の今ごろ、2024年の相場予想は円安の修正が大勢を占めていました。が、予想に反してさらに円安が進みました。2025年は米トランプ次期政権の政策運営や日本の政治情勢の不安定化により、現時点ではドル高・円安が見込まれるものの、円急伸を想定する必要もありそうです。
今年のドル・円相場を振り返ると、140円80銭でスタートし、徐々に上値を切り上げていきました。他の主要中銀が利下げに傾くなか、アメリカのインフレ率は想定通りに低下せず、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策維持でドル選好地合いとなり、2-3月にドルは150円付近で推移。春先は日銀の金融正常化に対する慎重姿勢とドル買いの継続でドル・円は一時160円台と34年ぶりの高値圏に浮上しました。
ゴールデンウィークでの日本のドル売り・円買い介入で、ドル高・円安は一服。しかし、151円台後半から再び上昇基調を強めます。米インフレ指標の高止まりによる引き締め的な政策を見込んだドル買いと、日銀の利上げ観測後退による円売りで7月に今年最高値の161円95銭まで上値を伸ばしました。日銀の予想外の利上げで失速も、9月の139円後半から11月は156円まで再びドル高・円安に浮上しました。
来年はトランプ次期政権の発足を受け米長期金利の上昇を通じたドル高傾向を、日銀の利上げサイクル入りを背景とした円高が抑制できるでしょうか。トランプ氏は大統領選を前にドル高・円安を「大惨事」としていましたが、いわば「ポジショントーク」で、基軸通貨国のリーダーらしくドル安には否定的とみます。一方、日本の政治情勢を考えれば、日銀の利上げは慎重にならざるを得ません。
米国経済に目を向けると、直近四半期の企業の業績は強さが目立ちます。エヌビディアは一部投資家の過剰な期待を下回ったため売られましたが、増収増益を継続。国内総生産(GDP)は3%前後の伸びを維持しており、金融緩和観測の後退がドルを押し上げる見通し。また、アメリカの関税強化の影響で世界経済が収縮すれば「アメリカ頼み」にならざるを得ないでしょう。
ただ、短期的に円急伸を警戒する必要もあります。ウクライナとロシアがここへきて緊張を高めているためです。トランプ氏は就任前の解決に自信を示していましたが、西側諸国製造のミサイルがロシアに打ち込まれ、世界的な戦乱に突入しつつあります。ウクライナ戦争と中東の混迷は同じ東西対立を軸としており、リスク回避の円買いは避けられないでしょう。とはいえ、有事のドル買いがドル・円を押し上げるかもしれません。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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昨年の今ごろ、2024年の相場予想は円安の修正が大勢を占めていました。が、予想に反してさらに円安が進みました。2025年は米トランプ次期政権の政策運営や日本の政治情勢の不安定化により、現時点ではドル高・円安が見込まれるものの、円急伸を想定する必要もありそうです。
今年のドル・円相場を振り返ると、140円80銭でスタートし、徐々に上値を切り上げていきました。他の主要中銀が利下げに傾くなか、アメリカのインフレ率は想定通りに低下せず、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策維持でドル選好地合いとなり、2-3月にドルは150円付近で推移。春先は日銀の金融正常化に対する慎重姿勢とドル買いの継続でドル・円は一時160円台と34年ぶりの高値圏に浮上しました。
ゴールデンウィークでの日本のドル売り・円買い介入で、ドル高・円安は一服。しかし、151円台後半から再び上昇基調を強めます。米インフレ指標の高止まりによる引き締め的な政策を見込んだドル買いと、日銀の利上げ観測後退による円売りで7月に今年最高値の161円95銭まで上値を伸ばしました。日銀の予想外の利上げで失速も、9月の139円後半から11月は156円まで再びドル高・円安に浮上しました。
来年はトランプ次期政権の発足を受け米長期金利の上昇を通じたドル高傾向を、日銀の利上げサイクル入りを背景とした円高が抑制できるでしょうか。トランプ氏は大統領選を前にドル高・円安を「大惨事」としていましたが、いわば「ポジショントーク」で、基軸通貨国のリーダーらしくドル安には否定的とみます。一方、日本の政治情勢を考えれば、日銀の利上げは慎重にならざるを得ません。
米国経済に目を向けると、直近四半期の企業の業績は強さが目立ちます。エヌビディアは一部投資家の過剰な期待を下回ったため売られましたが、増収増益を継続。国内総生産(GDP)は3%前後の伸びを維持しており、金融緩和観測の後退がドルを押し上げる見通し。また、アメリカの関税強化の影響で世界経済が収縮すれば「アメリカ頼み」にならざるを得ないでしょう。
ただ、短期的に円急伸を警戒する必要もあります。ウクライナとロシアがここへきて緊張を高めているためです。トランプ氏は就任前の解決に自信を示していましたが、西側諸国製造のミサイルがロシアに打ち込まれ、世界的な戦乱に突入しつつあります。ウクライナ戦争と中東の混迷は同じ東西対立を軸としており、リスク回避の円買いは避けられないでしょう。とはいえ、有事のドル買いがドル・円を押し上げるかもしれません。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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