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冨士ダイス Research Memo(6):業務効率化、成長分野の新製品開発、グローバル展開を推進(1)
2024/07/19 14:26
*14:26JST 冨士ダイス Research Memo(6):業務効率化、成長分野の新製品開発、グローバル展開を推進(1)
■中長期の成長戦略
1. 変化に対応できる企業体質への転換
冨士ダイス<6167>は新社長の下で「中期経営計画2026」を策定、前中期経営計画で最終年度が資源高や中国市場の停滞、自動車部品産業の回復の遅れなどで計画未達成となったことを踏まえ、新たに「変化に対応できる企業体質への転換」をコンセプトに掲げた。具体的には経営基盤の強化を図り、生産性向上・業務効率化、前中期経営計画で必ずしも思った成果が出せなかった海外事業の飛躍、また新規事業の確立を目指すとともに、昨今のテーマとなっている脱炭素・循環社会への貢献を重要施策として定めた。
「中期経営計画2026」の具体的な連結数値目標として最終年度の2027年3月期に、売上高200億円、営業利益20億円、経常利益率10.5%、ROE7.0%を掲げた。前中期経営計画ではフェーズ2として2027年3月期に売上高200億円、営業利益25億円、営業利益率12.5%を目指していたが、2024年3月期の業績内容を踏まえ、営業利益は5億円減額した。このように前中期経営計画のフェーズ2に対し利益の前提を引き下げたこともあり、従来以上に売上拡大にも増して利益達成重視の姿勢で臨むことを表明した。
今回の中期経営計画については、2024年3月期において収益悪化から前中期経営計画最終年度で未達成に終わったことを踏まえ、新社長の慎重な姿勢が伺え、最低限の目標数値とみられる。実際、利益については前期の熊本工場での一時費用、加えてLIB用金型の想定外の事態発生が利益の未達成要因であり、本来は限界利益率が高いビジネスを展開しており、売上高が戻れば急速に利益率向上が可能な企業体質となっている。まずは2025年3月期にイレギュラーな売上減少がない前提で売上総利益率は2023年3月期程度の利益率に戻ると考えられ、売上高が達成されれば利益は増額される期待がある。さらに2026年3月期に営業利益1,500百万円を達成し、2018年3月期の1,465百万円を抜いて営業利益で最高益更新できるかがポイントとなろうが、新製品効果などで十分クリア可能な数字と見られる。
以下では同社の中期経営計画主要項目について主に戦略分野中心に今後の方向性を見ていく。
2. 脱酸素・循環型社会への貢献
(1) 次世代自動車関連
同社は重要政策の中で脱炭素・循環型社会の形成に貢献する製品を積極的に開発・市場投入する方針であるが、とりわけ業容拡大においては最大需要先である自動車産業向けの対応が非常に重要となる。そのため二次電池、モーターコア、マグネット関連への注力を続けている。
二次電池ケース成形用金型では、足元でHEVの好調もあり需要は底打ちから回復に向かっている。同社は従来から角型対応は進めているが、円筒型については、今回の米国IRA法により痛手を被った。このため、今後は精密金型加工技術を生かし角形LIB用も本格的に手掛けていく。車載用角型LIBの市場は、トヨタ自動車<7203>(51%)とパナソニック ホールディングス<6752>(49%)が合弁会社として設立したプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(株)において拡張が進行中で2024年中に約7GWh/年の増産が始まる見通しで、改めて今後の拡大が期待される。
モーターコア用抜き金型では日系モーターコア製造メーカー各社向けに売上が拡大している。同市場は国内外に多くの競合が存在している。現在、用途としてはハイブリッド向けが多いが、今後EV向けの拡大を見据え、新材種VG48を投入した。EVではモーターの高出力化への要望に応じ積層数を拡大するために電磁鋼板の薄板化が必要となり、現在の0.2~0.3mmが採用され、同社では市場動向を見越した新材種開発も進んでいる。メーカーでは、積層方式が従来のカシメによるダボ積層から接着方式もしくは外装ダボ方式などで対応するなどの動きがある。また大口径化などで、高硬度電磁鋼板に対応する必要もある。高硬度電磁鋼板に対してはより摩耗しにくい金型素材が必要なほか、脆性が高いため衝撃で欠けやすく、高い耐ピッチ性が要求され、さらに金型に凝着しやすいため耐凝着性も必要とされる。同社が2022年8月にカタログ収載したVG48は従来品に対し破壊靭性や耐摩耗性に優れた長寿命化につながる新材種であり、複雑製品用の金型において放電加工による加工後でも材料強度が高く放電加工性にも優れている。今後メーカー認定が進めば大きく拡大が見込める。同社はモーターコア金型材種のラインナップを拡充することで、ユーザーの選択肢を増加させ、シェア拡大を図る。また昨今は日系以外の鉄鋼メーカーの電磁鋼板の製造ノウハウが高まっており、トヨタが宝武鉄鋼集団などの電磁鋼板を利用する動きなどもあり、中国ローカルメーカーに対し金型用素材の販売も強化する。
次世代自動車関連ではマグネットについて、車載用を中心にEVの本格拡大でネオジウム磁石を使った永久磁石同期モータの採用でネオジウム磁石需要の拡大が続く見通しだ。同社は粉末成形用金型、さらには海外向けに金型及び金型素材の供給を行っている。また最近はモーターコアとネオジウム磁石の一体成型技術が注目され、採用が増えている。これはモーターコアとネオジウムの隙間をなくすことで磁力線の漏れを最小に抑えることができ、また振動や騒音を大幅低減できるなどの様々な利点がある。このためEVの拡大とともに需要拡大が見込まれる。全体を通じ年率20%以上の成長が見込まれ、EV普及加速とともに売上拡大が加速することが予想される。
次世代自動車向けでは自動運転に関連して、高熱膨張・低比重硬質合金(TR合金)の中国市場での拡販に取り組んでいく。遠赤外線レンズ用の材料としてカルコゲナイドガラス※用金型母材としての用途を見込んでいた製品で、従来のガラスよりも高い熱膨張係数を持ち、温度変化にも敏感な素材に対し成形可能な母材が求められていた。具体的に従来のバインダーレス超硬合金では不可能な8MK-1を有し、ガラスの熱膨張係数に近づけることにより、離型時に硝材の噛み込みの抑制が可能となった。今後、自動運転などで多用されるADAS(先進運転支援システム)向けでLiDAR向けに採用の広がりが期待される。EV/PHEV販売台数世界トップのBYDでは高級EV車「HanEV」に前方3個、後方3個、計6個のLiDARを搭載している。中国ではレベル4の完全自動運転タクシーも2023年にサービスが開始され、一般車両でも運用が始まろうとしている。また諸外国でも実証実験が相次いでおり、本格的な生産拡大が期待される。なお同合金は車載だけでなく地上側の検知にも利用されると見られるほか、防犯監視カメラ向け赤外線レンズ用金型用途などにも利用されることから大径品対応も確立した。2024年から販売を始め、全体として大きく需要の伸びが期待される。
※遠赤外線を透過し物体を熱源として捉えることができる硝材で酸素の代わりにカルコゲン元素である硫黄、セレン、テルルなどを含むガラス。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
<SO>
■中長期の成長戦略
1. 変化に対応できる企業体質への転換
冨士ダイス<6167>は新社長の下で「中期経営計画2026」を策定、前中期経営計画で最終年度が資源高や中国市場の停滞、自動車部品産業の回復の遅れなどで計画未達成となったことを踏まえ、新たに「変化に対応できる企業体質への転換」をコンセプトに掲げた。具体的には経営基盤の強化を図り、生産性向上・業務効率化、前中期経営計画で必ずしも思った成果が出せなかった海外事業の飛躍、また新規事業の確立を目指すとともに、昨今のテーマとなっている脱炭素・循環社会への貢献を重要施策として定めた。
「中期経営計画2026」の具体的な連結数値目標として最終年度の2027年3月期に、売上高200億円、営業利益20億円、経常利益率10.5%、ROE7.0%を掲げた。前中期経営計画ではフェーズ2として2027年3月期に売上高200億円、営業利益25億円、営業利益率12.5%を目指していたが、2024年3月期の業績内容を踏まえ、営業利益は5億円減額した。このように前中期経営計画のフェーズ2に対し利益の前提を引き下げたこともあり、従来以上に売上拡大にも増して利益達成重視の姿勢で臨むことを表明した。
今回の中期経営計画については、2024年3月期において収益悪化から前中期経営計画最終年度で未達成に終わったことを踏まえ、新社長の慎重な姿勢が伺え、最低限の目標数値とみられる。実際、利益については前期の熊本工場での一時費用、加えてLIB用金型の想定外の事態発生が利益の未達成要因であり、本来は限界利益率が高いビジネスを展開しており、売上高が戻れば急速に利益率向上が可能な企業体質となっている。まずは2025年3月期にイレギュラーな売上減少がない前提で売上総利益率は2023年3月期程度の利益率に戻ると考えられ、売上高が達成されれば利益は増額される期待がある。さらに2026年3月期に営業利益1,500百万円を達成し、2018年3月期の1,465百万円を抜いて営業利益で最高益更新できるかがポイントとなろうが、新製品効果などで十分クリア可能な数字と見られる。
以下では同社の中期経営計画主要項目について主に戦略分野中心に今後の方向性を見ていく。
2. 脱酸素・循環型社会への貢献
(1) 次世代自動車関連
同社は重要政策の中で脱炭素・循環型社会の形成に貢献する製品を積極的に開発・市場投入する方針であるが、とりわけ業容拡大においては最大需要先である自動車産業向けの対応が非常に重要となる。そのため二次電池、モーターコア、マグネット関連への注力を続けている。
二次電池ケース成形用金型では、足元でHEVの好調もあり需要は底打ちから回復に向かっている。同社は従来から角型対応は進めているが、円筒型については、今回の米国IRA法により痛手を被った。このため、今後は精密金型加工技術を生かし角形LIB用も本格的に手掛けていく。車載用角型LIBの市場は、トヨタ自動車<7203>(51%)とパナソニック ホールディングス<6752>(49%)が合弁会社として設立したプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(株)において拡張が進行中で2024年中に約7GWh/年の増産が始まる見通しで、改めて今後の拡大が期待される。
モーターコア用抜き金型では日系モーターコア製造メーカー各社向けに売上が拡大している。同市場は国内外に多くの競合が存在している。現在、用途としてはハイブリッド向けが多いが、今後EV向けの拡大を見据え、新材種VG48を投入した。EVではモーターの高出力化への要望に応じ積層数を拡大するために電磁鋼板の薄板化が必要となり、現在の0.2~0.3mmが採用され、同社では市場動向を見越した新材種開発も進んでいる。メーカーでは、積層方式が従来のカシメによるダボ積層から接着方式もしくは外装ダボ方式などで対応するなどの動きがある。また大口径化などで、高硬度電磁鋼板に対応する必要もある。高硬度電磁鋼板に対してはより摩耗しにくい金型素材が必要なほか、脆性が高いため衝撃で欠けやすく、高い耐ピッチ性が要求され、さらに金型に凝着しやすいため耐凝着性も必要とされる。同社が2022年8月にカタログ収載したVG48は従来品に対し破壊靭性や耐摩耗性に優れた長寿命化につながる新材種であり、複雑製品用の金型において放電加工による加工後でも材料強度が高く放電加工性にも優れている。今後メーカー認定が進めば大きく拡大が見込める。同社はモーターコア金型材種のラインナップを拡充することで、ユーザーの選択肢を増加させ、シェア拡大を図る。また昨今は日系以外の鉄鋼メーカーの電磁鋼板の製造ノウハウが高まっており、トヨタが宝武鉄鋼集団などの電磁鋼板を利用する動きなどもあり、中国ローカルメーカーに対し金型用素材の販売も強化する。
次世代自動車関連ではマグネットについて、車載用を中心にEVの本格拡大でネオジウム磁石を使った永久磁石同期モータの採用でネオジウム磁石需要の拡大が続く見通しだ。同社は粉末成形用金型、さらには海外向けに金型及び金型素材の供給を行っている。また最近はモーターコアとネオジウム磁石の一体成型技術が注目され、採用が増えている。これはモーターコアとネオジウムの隙間をなくすことで磁力線の漏れを最小に抑えることができ、また振動や騒音を大幅低減できるなどの様々な利点がある。このためEVの拡大とともに需要拡大が見込まれる。全体を通じ年率20%以上の成長が見込まれ、EV普及加速とともに売上拡大が加速することが予想される。
次世代自動車向けでは自動運転に関連して、高熱膨張・低比重硬質合金(TR合金)の中国市場での拡販に取り組んでいく。遠赤外線レンズ用の材料としてカルコゲナイドガラス※用金型母材としての用途を見込んでいた製品で、従来のガラスよりも高い熱膨張係数を持ち、温度変化にも敏感な素材に対し成形可能な母材が求められていた。具体的に従来のバインダーレス超硬合金では不可能な8MK-1を有し、ガラスの熱膨張係数に近づけることにより、離型時に硝材の噛み込みの抑制が可能となった。今後、自動運転などで多用されるADAS(先進運転支援システム)向けでLiDAR向けに採用の広がりが期待される。EV/PHEV販売台数世界トップのBYDでは高級EV車「HanEV」に前方3個、後方3個、計6個のLiDARを搭載している。中国ではレベル4の完全自動運転タクシーも2023年にサービスが開始され、一般車両でも運用が始まろうとしている。また諸外国でも実証実験が相次いでおり、本格的な生産拡大が期待される。なお同合金は車載だけでなく地上側の検知にも利用されると見られるほか、防犯監視カメラ向け赤外線レンズ用金型用途などにも利用されることから大径品対応も確立した。2024年から販売を始め、全体として大きく需要の伸びが期待される。
※遠赤外線を透過し物体を熱源として捉えることができる硝材で酸素の代わりにカルコゲン元素である硫黄、セレン、テルルなどを含むガラス。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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