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戦略的沈黙:中国の国慶節演説で「台湾統一」への言及を避けたメッセージとその意味(2)【中国問題グローバル研究所】

*10:57JST 戦略的沈黙:中国の国慶節演説で「台湾統一」への言及を避けたメッセージとその意味(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「戦略的沈黙:中国の国慶節演説で「台湾統一」への言及を避けたメッセージとその意味(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。


※この論考は10月4日の< Strategic Silence: The Messages and Implications of China’s National Day Speech Avoiding the Theme of “Unification with Taiwan”>(※2)の翻訳です。


「台湾統一」への言及を避けたことの意味
2025年の国慶節演説で最も特筆すべきは、語られた内容ではなく、意図的に省略された内容、つまり「台湾統一」に言及しなかったことである。このテーマがほぼ完全に抜けていたことは、2019年の「台湾同胞に告げる書」記念談話、2021年の中国共産党創立100周年記念談話、さらには2023年と2024年の国慶節演説といった過去の演説と際立って対照的だ。こうした過去の演説では、習氏は「完全な中国統一」を「中華民族の復興」と並べて位置付けることが多く、「台湾問題の解決」を歴史的使命と明言していた。しかし2023年以降、このように言及する頻度と強調度合いは着実に低下しており、近代化と復興に関する広範なナラティブの中に次第に組み込まれるようになっている。

ただし、2025年の演説で抜けていたからといって、この方針を放棄または軽視したと解釈するべきではなく、「戦略的沈黙」の一形態と考えるべきだ。景気後退、大国間の競争激化、南シナ海における緊張の高まりを背景に、中国政府はリスクの拡大や多方面に手を広げすぎることを避け、台湾問題を重視しない選択をしたように見受けられる。そうすることで、国内的には国民の関心を経済実績や統治の安定に向けることができ、対外的には政治的コミットメントに縛られることなく外交上の駆け引きの余地が広がる。

その意味で、沈黙そのものが一種の宣言と言える。台湾関連のレトリックがなかったことは、露骨な動員から、曖昧さと時間的猶予の確保へと戦略を見直したことを示している。台湾問題は依然として中華民族の復興という包括的ナラティブの中に組み込まれているが、今は差し迫った緊急課題ではなく、長期的な戦略目標として位置付けされている。実際、より長期にわたる柔軟な歴史的時間軸に置くことで、中国政府は戦略的影響力を保ちながら政策を調整できるようになった。


結論
2025年の国慶節演説は、沈黙を意図的に選択することで、それ自体が国家運営の戦略的手段になり得ることを示している。習氏が台湾統一に言及しなかったことは後退ではなく、慎重に計算された選択であり、内外の圧力が高まる中でリスクを抑え、時間的猶予を持たせ、外交上の柔軟性を維持しようとする中国政府の試みを反映している。露骨な動員からレトリックの抑制に転換することで、台湾を「中華民族の復興」という広範な枠組みの中で、長期的ながら決して諦めない目標へと効果的に設定し直した。このような形の戦略的沈黙には複数の効果がある。差し迫った対立を緩和し、経済・制度的優先事項を中心に国内統治を固め、台湾問題を長期的な時間軸に組み込みつつ中国の影響力を維持できるようになる。中国の政治談話において、語られないことは語られることと同等か、それ以上の重みを持つ場合がある。2025年の演説は、言及しないからといって問題が存在しないわけではなく、戦略の調整に過ぎないということを改めて認識するものとなった。


中国の国慶節祝賀レセプションで乾杯の挨拶をする習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/6713




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